君の幸せを願ってる

□V
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──薬室


カチャ


「リュウ坊ー。朝子の調子はどう?」

「切り傷や擦り傷には塗り薬を塗っておいたから大丈夫
あとは起きてから痛み止めを飲んでもらって……」


私は人の話し声が聞こえて目が覚めた


『ん……ここは?』

「あ、目が覚めたか…い?」

オビは私と目を合わせると少し驚いた顔をした

も、もしかして……


すぐそばに水が張ってある桶があったため、覗いてみると


『あ、やっぱり……』

カラーコンタクトを付けていなかった

やっちまったと頭を掻くと


パサッ



ウィッグまで落ちた

『やっちまった……』

そろーっと後ろを見やると、予想どおり驚いたオビの顔


「朝子、白金の髪に淡紅色の眼だったんだね」

『し、白金なんて大袈裟な……
ただの白髪と一緒だよ』

「なんで隠してたの?」

『だって、気持ち悪いでしょ?この格好
全体的に色が抜けきってて』


その時、奥から誰かが出てきた


「これ飲んで…痛み止め」

なんとそれはリュウだった



─────────



朝子はリュウ坊が来た途端固まった

リュウ坊は戸惑ってるし、朝子は何か複雑そうな顔をしている


「あの、やっぱり俺の薬じゃなくて白雪さんの薬のほうが……」
『いえいえいえいえ!リュウの薬がいいです!是非それを飲ませてください!!』


彼女はそう言ってもまだ複雑そうな顔をしている


「あの…何か言いたいことがあるなら何だって言って……」

『えっと…じゃあお言葉に甘えて……』


彼女はそう言うが早いかバッとリュウ坊に飛びついた


『リュウかわいい!まじで天使!貰っちゃいたいくらいかわいい!うちに欲しい!……あ、うち無いか』

「あ、あの……」


流石にこう来るとは思ってなかったのだろう、戸惑いがちなリュウ坊


『頭撫でてもいい?』

「え…う、うん……」

朝子はまるでリュウ坊の母親か姉のような手つきでリュウ坊を撫でた


『うわぁ、フワッフワだあ〜猫っ毛なんだね〜
はあ〜…かわいいなぁ』

「あ、あの……」


リュウ坊はオズオズと話しかけた


『あ、ごめん!いつまでも撫でてて』

「いや…あの、もしかして複雑そうな顔をしてたのって……」


そこで彼女ははっと気がつく


『ご、ごめん!不安な思いさせちゃったよね!?
リュウの薬が信用出来ないとかじゃないんだよ!?むしろすべての薬をリュウに処方してもらいたいくらいだよ!?!?』

「あ、ありがと……」

『って、ごめんね。私こんなのでさ…
こんなの見たら戸惑うし引くよね……ごめん』


急にシュンとしぼむ朝子


『ほら、いきなりこんな事したら絶対恐怖を植え付けちゃうじゃない?』

「あの…朝子さんがしたいようにでいいよ
自然体のほうが……」


その言葉にパァっと明るくなる朝子


『ほんとに?ありがとう!』




その笑顔はまるで、花が咲き誇るようだった



「あの…
その怪我はどうしたの?」

『ああ、これ?
私昔からよく怪我するんだー
疫病神みたいでしょ?あんまり近くに居ない方がいいよー』


そう。私は悪魔なんだから


「朝子。牢に戻ろうか」

『はいはーい。じゃあねーリュウ』

「うん」





朝子が牢に戻されたあと





「リュウ坊ー」

「あ、オビさん」

「朝子の傷から俺が見つける前の状況解る?」

「うん
打撲痕は棒状のようなものでできてる感じだったし、切り傷も鋭いもので切られた感じだった」

「てことは、主たちがみた盗賊たちのようすと照らし合わせるとー……
朝子はアイツらと戦ったと」


そうすれば容易に一致する


「てことは朝子は別に悪い人じゃないんじゃ…?」

「おれ、明日山に行くからその時に様子見としてついて来てもらうのは?」

「でもリュウ坊。もし朝子が危険な人物だったら……」

「大丈夫。オビさん、見ててくれるつもりなんでしょ?」

「こりゃまいったねぇ
じゃあ、主にもそう言っておくよ」




明日、彼女がどういう人物なのかがわかる


オビは心の片隅でそう思っていた




To be continue……

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