君の幸せを願ってる

□U
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シーンとその場が静まり返っている


『あ、もし牢屋っていうのに気が引けるならいっそここで私が自害するとか?』

「はい!?」

オビが心底驚いた顔をした


『じゃあやっぱ捕虜っていう方向?』

「ねぇゼン。この人悪い人じゃなさそうだよ」

『あのね白雪。こんな得体の知れない私が言うのもなんだけど、簡単に人を信用したらダメだよ?
てことで、ウィスタル城にしゅっぱぁ〜つ!』

おー!と勢い良く拳を突き上げると、みんなが「悪いな……」という顔で私を連れて行った



ガチャン



『おー、ここがウィスタル城の牢屋かぁ
うわぁ、景色が綺麗だなぁ!』

なんと、私の部屋は地上高くにあった

『あ!あれってクラリネスの紋章だ!綺麗だな〜』


私は初めて生で見る赤髪ワールドに目を輝かせながら景色を見ていた



「おじょーさん」

『ん?あ、オビ
てか、お嬢さんって私のこと?』

「他に誰が?」

『でも、お嬢さんなんて言っちゃったら白雪と被っちゃうよ?
だから呼び捨てでいいよ』


彼は一瞬驚愕の色を見せたがそれは一瞬のうちに消え去ってしまった


「お名前は?」

『朝子』

「朝子…ね。了解」

『よろしく』


私は表面上は平静を装っていたものの、心の中ではオビに朝子と呼ばれたことに対して歓喜の思いでいっぱいだった


「じゃ、何かあったら呼んでね」


そういうと彼は部屋の窓から側の木に飛び移って何処かへ行ってしまった



一通り景色を観察し終え、何をしていようかと考えた結果武道の感覚を思い出すべく体を動かすことにした



『(優しいゼンたちのことだ。きっと私のことを許してくれたり、有無を言わせず私をここに置くなどをするに違いない
もしそうなった時のために、戦う術(すべ)を身につけておく方がいいかな)』


そしてなんとか感覚を取り戻してきた

バスケやバレーなどの運動は苦手なのに、こういう体術などは大得意なのだ



そして夜


『もう寝よっかな』

寝ようとして、カラーコンタクトを外していないことに気がついた

『ま、誰か来ても髪だけ隠せば十分だよね』


私は修行(?)を止めて眠りについた





─────────




翌朝


「主に言われて様子を見に来ましたよー……って、あら?」

なんと、牢の中はもぬけの殻だったのだ


「衛兵!」

オビが呼ぶと飛んでくるように衛兵が期待


「ここにいた女は?」

「はっ!?確かに昨夜まではここに……
申し訳ございません!どうやら逃げられたようです」

「わかった。俺は主に報告してくる」


オビは颯爽といなくなった




「主!」

「なんだオビ」

「朝子が姿を消しました」

「朝子?そんな奴いたか?……あの女か!」


ゼンをはじめ、城の者の一部は捜索に出た




─────────




朝子が目覚めた頃、もう日は昇っていた


『ん……ここは?』

「お、起きたか嬢ちゃん」

「お前城の情報に詳しいんだってなァ」


彼女が目を覚ますとそこには幾人もの男たちがいた


『あなたたちは誰』

「俺らかぁ?俺らは盗賊団だぁ!」


ガハガハと愉快そうに笑っている男たち


『フッ……誰があんたらなんかに教えると思う?…………下衆どもが』

「おい嬢ちゃん。女だからって手ぇ出されないと思ったら大間違いだぜ?」

「どこまでも優しい男だと思うなよ?」

「お前のどこが優しいんだよ!」


……盗賊団に優しいもクソもあるか


『私は絶対に言わない』

「ふざけてんじゃねぇぞ!!」


男たちが迫り来るなか私は冷静に対処して戦う


『(昨夜のうちに修行しててよかった……)』


相手がナイフやらこん棒を持っていたため怪我を負ったが、なんとか倒すことが出来た



『いてて……やたら怪我したなぁ』

まぁこれくらいは馴れている

元いた世界で“白い悪魔”として散々痛めつけられてきたのだから



私はフラッと盗賊たちがいた小屋のような場所から出た


『よし、とにかく高いところに行ってここがどこか確かめよう!』

私はよろめきながらも山を登った


『つ、着いたぁ…
ここなら(下も見渡せそうだし)大丈夫かな』

ていうか制服切られてるし、内出血は痛いし、切られたとことから血が出て気分から来るものなのか体もだるい


「ここなら何が大丈夫なんだい?朝子」

『え、オビ!?』


その途端よろめき、私は意識を手放した





─────────




ゼンたちが朝子の捜索に乗り出した頃


「主!俺は山ん中探して来ます」

「頼んだぞオビ」


オビはスッと木に飛び移ると瞬く間に消えていった


「あいつ、やっぱり猿みたいだな」

「前世は猫だったんじゃない?」

「ミツヒデ、木々いくぞ」


朝子を捕らえておいたのは俺だ。俺にも責任はあると言ってゼンも捜索活動…というか情報集めをしている


「ゼン殿下!資料をここに」

「助かる」


パラパラと資料をめくるとある盗賊と襲撃のあとが一致した


「……行ってみるか。行くぞミツヒデ、木々」


ゼンたち一行はある小屋に着いた

先程まで朝子がいたところだ


ドアを開けると、そこにはたくさんの男が倒れていた

そこに朝子の姿はなかった


「はずれたか?」

「いや……朝子はまだ何処かにいるだろう」

「探してみようか」


三人が小屋から出てきた時、人影が走ってきた


「主ー!」

「オビ!」

「ハッ…見つけ…ハァッ…ましたよ…」

「大丈夫か?」

「それより朝子を薬室に…!」


彼の背には傷を負った彼女がいた






「リュウ坊頼んだ」

「うん。じゃあここに寝かせて」

「リュウ!アケギシグレ持ってきました!」

「じゃあこれと一緒にすり潰して…」


カチャ


「オビ!」

「大丈夫ですよ。今お嬢さんとリュウ坊が頑張ってます」

「朝子を見つけたときの事を詳しく教えてくれないか」



「俺が山を探していたとき、人の気配がしたもんで行ってみたんですよ

そしたら朝子がいて、声をかけたらそのままドサッと倒れたんですよ」



一体彼女の身に何が起こったのか


彼らがそれを知るのはまた次の話である





To be continue……

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