赤髪の白雪姫

□第12話
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「湯、持って来い!湯!!」


扉を開けようとしたら凍っていたため、溶かそうと兵士の一人が呼びかけた

その一声で、湯のバケツリレーが始まった

そんな中、朝子は砦内の掃除を手伝っていた


『あ、そろそろ交代の時間だからみんな片付けを始めよう。私が次のチームを呼んで来るから』

「はいっ!」

「すみません、ありがとうございます」


みんなが礼を言う中、一人が朝子に駆け寄った


「あの、朝子さん。休んでおられないようですが、お体は大丈夫ですか?」

『大丈夫だよ。みんなが知らない間に休んでるから』


そう、いたずらっ子のようにウインクして言った彼女は、次のチームを呼びに行った


『よし、次のチーム出番だよ!
薬をもらった人から、次は屋上の雪かき作業ね!』

「「「はいっ!」」」


朝子は雪かきの指示を出すと、扉の氷を溶かしていたチームに火傷した者が出たと聞き、火傷に効く薬を持って治療にあたった


「朝子」

『あ、木々!どうしたの?
まさかっ…怪我したとか!?』

「してないよ。それより、大丈夫?休んでないんでしょ」

『やだな〜、大丈夫だってー!
みんなが知らないところで隠れて休んでるから!』

「そう」


木々は心配して朝子の様子を見に行ったのだが、変わった様子は特になかった

そして朝子は、夜の見張りに着いた







─────────







「今日からまた通常通りたのんだぞ」

「「「はい!」」」

「ゼン殿下、木々どのミツヒデどの、朝子どの、白雪どの」
「「「道中お気を付けて!」」」

「ありがとうございました!」



「そうだ、白雪。王都行きの馬車があるからそれで帰れ」

『いや、私が送るよ。一人にするのは危ないしね』

「でも、朝子さんはゼンたちに着いていかなくて大丈夫なんですか?」


心配そうに聞く白雪に、朝子は優しく微笑んだ


『大丈夫だよ。それに…早くリュウに会いたいしね』

「では、お言葉に甘えて……」


その様子を見守っていたゼンが口を開いた


「朝子…無理はするなよ」

『だーいじょうぶだって!私のことは気にせずにちゃんと仕事してくるんだよ。第二王子殿』


語尾に音符が付きそうな感じでそう言った朝子は、白雪を自分の前に乗せると馬を走らせて行った







―――――――――――







『ただいまー!クラリネスー!!』

「朝子さん。ありがとうございました」

『いえいえ〜。何のこれしきー…って』


急に考え込む朝子に不思議に思った白雪が顔を覗き込んだ


「どうかしたんですか?」

『白雪。私、行くところが出来ちゃったからここからは送ってあげられないんだけど……』

「大丈夫ですよ?むしろ、ここまで送ってきてもらってありがとうございます」

『うん…。白雪』

「はい?」

『このまま薬室まで一直線に帰るんだよ?』


白雪は朝子の言葉が少し気になったものの、素直に頷いた

白雪が頷くのを確認してから、朝子は『それじゃあ』と言って、違う方向へ馬を駆けさせていった








――――――――――――








『失礼します』


朝子が扉をノックして一つの部屋に入った


「おや、朝子じゃないか。元気にしてたか?」

『勿論だよ。兄様』

「どうして俺の部屋に?」

『兵の配置が変わってたから、もしかしてと思って…』

「朝子は本当に賢いな」


そう言って、彼女の兄でありクラリネス王国の第一王子であるイザナは朝子の頭を撫でた

すると、彼女も嬉しそうに紺の瞳を細めた


「そういえば、最近ゼンの友人とかいう娘が入ったそうじゃないか」

『…私がせっかく来てるのに他の子の話するの〜?』


ぶ〜っと頬を膨らませる朝子に


「悪い悪い」


ハハッと笑うイザナ

暫く二人で話した後、朝子はイザナの執務室を出て城内をウロウロした





「お答えできません」


そんな声がふと聞こえ行ってみると、衛兵をじーっと見つめるゼンがいた


『あっ、ゼンだー
木々ぃー!お帰りー!!』

「朝子。ただいま」

「お前…またそっちに行ってたのか…」


ゼンは衛兵に背を向け廊下を歩いた


「木々、ミツヒデ。身支度を整えておけ」

『はーい!私は?私は?』

「…また行くのか?
まあいい。お前がいた方がやりやすい部分もあるだろう」

『わーい』


朝子はすでに身支度が済んでいたため城内を散歩していると、オビをみつけた

サッとオビの近くに寄った時


ビュッ


朝子の目の前を通り、オビの頬を切り裂く石が飛んできた

オビが探るように飛んで来た方向を見つめる中、朝子が大きな声を出した


『ちょ、危ないって!もうちょっと周りを見て石を投げて!?

え?急に近づくお前が悪い?…絶対私のこと気付いてたよね!?
かわいい妹に危害を…って、話を聞いて行けえぇぇ!!!』

「朝子嬢?誰と喋って…」

「オビ、出てこい!
オービー!10秒以内に出てこーい!」


サッとゼンの元に行くオビと、そのあとを追う朝子


「…お前その顔どうした?」

「あ、これですか?それが今──」
「失礼致しますゼン殿下!
こちらを至急お渡しするようにと…」


渡された書状は、イザナからのものだった



それは果たして、どんな内容だったのか……








To be continue……

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