赤髪の白雪姫

□第9話
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「クラリネス王国ウィスタル城“宮廷薬剤師”
今日からこれがお前の身分証か、白雪」

「うん」


キラキラした顔で頷く白雪


「はー。城に入るとこういうのが貰えるんだね」

「ああ。ミツヒデと木々と朝子もお前と色違いの持ってるぞ」

「いいな。ミツヒデと色が違って…」

「どういう意味だ!?木々!?」


そこに、ヒョイと朝子が出てきた


『私はミツヒデと同じ色がよかったな〜』

「おお!そうかそうか!」


急に機嫌が良くなり、ニコニコ笑顔になるミツヒデ


『あ、そうだミツヒデ!』

「うん?」

『今度私の好きな果物買ってくれない?』

「いいぞー!」




そんなやりとりを見て、3人は思った

ミツヒデは朝子に甘すぎるな…と



「今日は記念に残る日だな、白雪。歓迎する」


ゼンの言葉に嬉しそうに微笑む白雪の笑顔は眩しかった





───────────






『あ"ー。憂鬱だなぁー』

「そんなこと言わないでくださいよー」


グッタリとした顔をする朝子にヘラヘラと笑いかけるオビ


『なんで私がこんなこと…
ああぁぁ!天使に癒しを求めたい!!』

「…大丈夫かい?」

『大丈夫に見える?』


あ"ぁん?とでも言うかのようにオビを見る朝子


「わぁお……怖い怖い」


両手を顔の横に上げ、降参のポーズをとるオビ

それから暫く話した(オビが一方的に話しかけた)あと、朝子は(彼女曰く)天使のもとへ向かった







─────────






『はーやっくっ♪あーいたーいなっ♪』


ルンルンとスキップをしていると、薬室の方から話し声が聞こえた


「子供とは思えない知識と表情で…得体が知れないでしょう、彼は

薬剤師とは言っても、関心があるのは毒のみでいつも実験台を探しているとも聞きますからね…

出来れば関わりたくはないという話です」


「……植物が外敵から身を守る為に作る毒素が、人体には薬となることが多いとご存知ですか」

「い、いやあの…ですが犠牲者も出たとか出ないとか……」



白雪と男の声がして、男が喋ったあとにダン!っと机を叩く大きな音が聞こえた


「そんないい加減な判断でしていい話じゃない!

撤回して頂けますか」




──────────





バキバキバキッ……


「え、王子…!?」

「ここは“白雪の友人”でよろしく!……イデッ」


窓越しにリュウに話しかけたゼンの頭に、木の枝がパラパラとふりかかった

見上げた先には、木を握りしめている朝子


「おい、朝子!お前は城の庭の木を折るな!」

『ごめん』


ゼンの言葉に返事をすると、シュタッと木から降りてきた朝子


『リュウ……』


そして何故か、泣きそうな顔をしている


「朝子…泣かないで…」

『でもっ…』

「ごめん。俺がこんなだから……」

『そんなことないっ!』


そう言って朝子はリュウに抱きついた


『リュウのことは私が一番信頼してるし、約束したでしょ?怪我とか病気で大変になったら、絶対にリュウを呼ぶ…って』

「うん。ありがとう」

『落ち着いた?……あんのクソ貴族…1回シメる……』

「お前が落ち着け!」


バコッと頭をはたかれた朝子


『ゼン…ありがと』

「ああ。」

「……怒ったのかな…」


急にリュウがポツリと呟いた


「白雪か?」

「……おれ、なんでか人の事はよくわからないんです
おれの理解力が人に子供扱いされないくらい異質だからかな」


その言葉をリュウが言った瞬間、朝子がピタリと止まった


「……朝子?」

『……リュウは…リュウはもしかして私のこともわかってなかったの!?
それなのに、出会ってからここ数年ずっと一緒にいてくれたの!?』


気付かなかった!ごめんっ!と、ガバっと頭を下げた朝子


「いや。おれ、朝子のことは不思議とわかるよ」


そう聞いて、朝子はパアァと花が咲いたような笑顔になった


「ややこしいな。あいつをわかりたいんだろ?
だったら深く考えるのは遠回りだ。朝子みたいに普通に仲良くなればいい話だろう

お前が子供じゃなかったら、こんな助言してやらないけどな?」


そう言って、ゼンはひらひらと手を振りながら去っていった


『うわぁ〜、彼氏でもないのにそんなこと言うかね普通』


そんなことを呟く朝子の隣で、呆然とゼンの後ろ姿をリュウは見ていた






──────────







『久しぶりにリュウに会えたな〜』


まるで、ここが天国かのように幸せそうな顔をしながら城内を歩く朝子


『あ、木々だ。おーい、き…』

「王子!!まって!」

『あ、リュウ!』


だだだっと走ってゼンに駆け寄るリュウを、そこにいた兵が持っていた槍の柄を使って止めた


『あいつ…リュウが宮廷薬剤師だってしらないな……?』


締めてやろうか?あぁ?とでも言いたげな雰囲気で歩く朝子に、衝撃の言葉が飛び込んだ


「…おれ、どっどうしてだかわからないんだけど……
あの人が、一人で…な、泣いてて…」


ゼンがリュウに言われた場所へ走って行くのを確認し、朝子はリュウに駆け寄った


『リュウ!大丈夫?』

「……う、うん」

『深呼吸して?』

「……スー…ハー…スー……うん、大丈夫。ありがとう」

『どういたしまして』


ミツヒデと木々を含め、四人で話をしていると誰かが走ってきた


「リュウ!
リュウ、平気ですか!?私驚かせたみたいで…すみません」

「──なんで…来たの?
さっきおれ、あなたの事怒らせたんじゃないの?」

「──リュウ、私の名前覚えてますか?」

「覚えてるけど…?」

「じゃあ、呼んでくれたら怒ってるかどうか答えます」

「えっ…
しら…ゆ、き……さん」

「はい!」


にこっと微笑んだ白雪は、まるでユラシグレのようだった

うん。と言ったリュウの頬も、心なしか少し緩んでいた


『リューウ、一緒に昼寝しよ?』

「え。おれ、あと少し図式の続きを描きたい」

『なら、そのあとで。ね?』

「うん。いいよ」

『やった!』


リュウに了承を得て喜ぶ朝子の笑顔は、とても綺麗だった



「朝子さん、綺麗……」

「本当にね。お面なんて付けてるのが勿体無いくらいだよ」

「いつか朝子も、あの面をつけずに生活できる日がくるといいな」

「ああ」


ルンルンとスキップをしながらリュウを引っ張っていった朝子を見て、四人はそうつぶやいていた







To be continue……

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