赤髪の白雪姫

□第8話
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『宮廷付き薬剤師見習い␣志願者審査期間
招集は青評議会の間か〜』


朝子はいつものように朝の散歩をしていると、そんな張り紙を見つけた


『今回は何人残れるか……』

「お、朝子じゃないか」

「なにしてるんだ?そんなとこで」

『ゼン、ミツヒデ』


ジッと張り紙を見ていると、廊下の向こう側からゼンとミツヒデが歩いて来た

何故だか、木々の姿は見当たらない


「宮廷付き薬剤師見習い␣志願者審査期間か
そうか、今日城に集まるんだったな」

「そうかって…
前々から気にして落ち着かなかったろー、ゼンは」


はははは!と笑うミツヒデを、うるさいとばかりにジト目で見るゼン


『というか、木々は?』

「え?さあー」

「いつまで俺はミツヒデとここに置き去りにされていればいいんだ?ミツヒデと」

『ミツヒデとじゃないでしょー。私もいるじゃない、ミツヒデ以外に』

「うわっ、二回言った!
二人合わせて四回も言った!!
嫌なのか!?」


ゼンは柱に肘をもたれかからせ頬杖をついた


「嫌なわけないだろう。心休まるよ」

「……傷つくなー」

「ゼン!」


ふと、下からゼンを呼ぶ声が聞こえた


「白雪!?」『やっほー』


白雪を見つけると、ミツヒデが止める間もなく窓枠に足をかけ下に飛び降りた


「どうした。これから試験だろう」

「うん。ちょっと顔出しに…」
『ゼーンでーんかー!今からそこに着地するんで危ないですよー!!』


と、朝子は叫びながらすでに落ちて来ている


「は?ちょ、うわっ!」


ゼンが驚きのあまりよけられなかった


「ゼン、危ないっ!」

『ぃよっと』


タンッと城壁を蹴ってクルリと宙返りし、ゼンよりも二三歩前に着地した朝子


『危ないなーもう』

「朝子さんすごいです!かっこいい!!」

『えへへ、ありがとう』

「っおまえ、危ないだろうが!」

『いやぁ、それほどでもー』

「褒めてないっ!」


朝子とゼンが漫才を繰り広げていると、ミツヒデも降りて来た


「木々!よかった。うまく会えたんだな」

「門で待ち伏せした」


そんな会話をしている側近たちにジト目で、人さらいが出たようだな…と呟いた


「白雪。落ち着い『おちついてる?』…おい」

「うん?……わりと?」

「わりとっておまえ…」␣␣ぎゅ


白雪はゼンの手を握ったどうやら気合いを貰ったようだ


「志願者みんな審査期間中は城にいるんだよね?」

「あ、はい!泊りがけです」

『試験は何をするんだろうなー
ね、ゼン』

「知らん」

「頑張ってね、白雪」

「はい!じゃあ行ってきます!」


白雪が行ったあとには四人が残っていた


『白雪なら受かるだろうけど、実現するといいねー』

「そうだな」

「城で会えるようになるもんな?」

「ミツヒデは少し喋るのやめたら」

『右に同じくー』

「おまえら酷いな!」




──────────





「庭で見た?白雪を?」

「はい、昨日の巡回の際に!
他にも数人花鏡の道のあたりにいましたが
自分、ひと目で白雪どのだとわかりました!!」

「…よかったな」

『多分薬草園を使うんじゃなーい?』


にょっとゼンの背後から現れた朝子


「お前、剣の稽古は?」

『おーわぴょん』

「…なんだその“おーわぴょん”って」

『知らないの!?木々が言ってたことだから知ってた方がいいよ!!確かめてみないと!』

「そ、そうなのか」

『そーれーよーりーも、薬草園!
どうせ様子見に行くんでしょ?早く仕事を終わらせないと!』

「あぁ。そうだな」



その後、ゼンが木々に“おーわぴょん”と言ってすごい顔をされたこと。そして説明を朝子がしたら木々もミツヒデも笑って(ミツヒデは大爆笑)朝子がゼンに怒られたのは言うまでもない






─────────







『それは大変だったねー。お疲れさま』

「朝子も大変だったんじゃないのか?あの男の見張り」

『いや?見てるだけで勝手にベラベラ喋るよ』

「そう言えば、名前知らないね」

『オビだってー』

「そうなのか
それにしても白雪。あとは選出結果を待つだけか?」

「はい!」

「朝まで薬草園にいたんだから、ゼンも選ばれるといいね」

『そうなれば肩書きは“クラリネス王国第二王子兼宮廷付薬剤師␣ゼン・ウィスタリア・クラリネス”だねー
長っ!』

「だからあれはだな…
しつこいんだよお前らは!」



朝子と木々、ミツヒデは、本当に困った主人だ。といいながら帰った




『見てて飽きないけど、とばっちり食らうこっちの身にもなれってね』

「ま、とばっちりが無かったらそれはそれで違和感があるがな」

「まあね」






今日もウィスタル城の上には、綺麗な青空が広がっている













To be continue……

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