赤髪の白雪姫
□第7話
1ページ/1ページ
「誰だ!!」
『この私か?
私はアンパンかもしれないマンだ』
「あんたさっきの……」
アンパンかもしれないマンは被っていた面を捨てた
『ひとつ、言いたいことがあってね』
「なんだ」
『差別は良くないですよ?侯爵として』
「侯爵!?」
驚く白雪をよそに話し始める朝子
『別に、氏素性の知れぬ街娘ではないでしょう?
ちゃんと、タンバルンで生まれそだったという経歴も、薬剤師として働いていたことも、常連だった人に聞けばわかることでしょう?
それに、私のことは何もここまでしなかったじゃないですか』
「それは…」
『もちろん、責めてるわけではありませんよ?
ただ、私が一番怒っているのは…
ゼン殿下への侮辱とも取れる言動をしたこと』
その言葉を聞いて、ハルカは驚いた
「私は侮辱など…」
『私からしたらそうなのですよ
あの方が己の損得で動く人だと本当にお思いですか?
あの人は己の信じた道を行き、様々なことに目を向けながら動く人です』
「なっ…」
『わたしは、ゼンが信じた者は全て信じています
勿論兄様も
とまあ、こういう事が言いたかったわけですが…処分をするならお好きに』
朝子がペコリと一礼した
「おーい。もういいか?」
『どうぞ。お待たせしました』
壁の影からゼンが出て来た
「あっ!?」「殿下!」
「俺の為と…そう言ったかハルカ侯?」
「…申し上げた通りです」
「手段を間違えたな。成り行き次第で城中の騒ぎになるところだぞ」
「…はっ」
俯いて返事をするハルカ
「──ゼン、ずっと聞いてた?」
「侯爵を見つけたらお前と話し出したからな」
そのあと出ていこうと思ったらもう一人出て来たからタイミングを失ったんだ
と、朝子を見ながらゼンは言った
「出ていきそうになるのを全力で我慢したんだぞ。盗み聞きくらい許せ」
「見事な返答だね……」
『えらいえらい』
「頭を撫でるな!」
『照れない照れない』
「娘!殿下の名を呼び捨てにするとは何事だ!」
「…あのなハルカ侯……」
『この状況でまでブレ無いとは…流石と言うか何と言うか……』
ギンッと白雪を睨みつけたハルカを呆れた目で見るゼン
「俺は␣␣な。権威や地位を何より重んじる者が周りにいるのも悪くないと思っている
多様な考えがあるのを知るのもいい」
『ゼン……』
「……ハルカ侯。貴公にとって爵位は重要か?」
「はい」
ハルカは迷いなくスッとゼンを見据えて答えた
「ならばせいぜい大事にされよ
二度目はない」
「──はっ!」
右手を体の前に折り曲げて礼をすると、そのまま去って行った
「──あとおまえ!」
「一件落着ですね、主!」
「誰が主だ!!」
『イェーイ』「イェーイ」
朝子が手を出すと、それに乗って青年もパンッと手を合わせた
「いいか。おまえは俺の目の届くところにいてもらうからな……」
「そう警戒しなくても、あの子にはもう手出しはしませんよ」
落ちる落ちる、と両手を顔の横に上げてお手挙げのポーズをする青年
「気に入ったし、あんたの為になりそうだ」
「木々、ミツヒデー
こいつ何とかしてくれ。あ、朝子おまえアイツの面倒見てくれ」
『えー……』
「さっきハイタッチしたのは誰だ」
『それはわたくし目にございます。第二王子殿』
「ならお前もいって来い」
『うわー』
ヒョイッと彼同様、下に投げられた朝子は棒読みで悲鳴を上げながら落ちていった
「大丈夫ですか!?」
『当たり前だろう!私はアンパンかもしれないマンなのだからな!!』
「……木々ーミツヒデー。さっさとそこの二人持っていってくれ」
「りょうかーい」
──────────
「あの人、何者なのかな」
「さあな…
まあ、あいつらや朝子に任せておけば問題ないだろ」
「そっか」
「ゼン」
「ん?」
「いつか私、自分で門をくぐれるようになってゼンの味方になりに来る」
「心強いな
俺も待つ、この城で」
『白雪ー!私も待ってるよー!!』
「…あいつ、地獄耳か」
『聞こえてるよー』
␣␣␣␣ともにいる時間を
␣␣␣␣守りたいひとがいる
␣␣␣␣力になりたいと願う
␣␣␣␣それは自分の背を押して
␣␣␣␣──前へと進む導になる
To be continue……