赤髪の白雪姫

□第5話
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クラリネス王国␣首都ウィスタル␣─王城─


コンコン


クラリネス王国第二王子である、ゼン・ウィスタリア・クラリネスの執務室に、一人の客が来た


「白雪……?幻聴………?」


ゼンのその言葉に“まだ何も喋ってないし、私は白雪じゃない”とその女は言った

彼女の名は朝子
訳あってファミリーネームは無い


「朝子が赤いフードかぶってるからって間違えるって、相当重症だね」


冷静にそう言うのは、ゼンの側近の一人である␣木々・セイラン

美しい金髪を一つにくくり、左肩の方に流している


と、また新たな客がやって来た


「入るよー」


そう言って入って来た、緑がかった鈍色の髪を持つ背の高い穏やかそうな男

彼の名は␣ミツヒデ・ルーエン

彼もまた、ゼンの側近の一人である


「白雪………?幻聴……?」

「いや…まだ何も喋ってないけど…本物だよ」


先程から名が上がっている白雪は、ミツヒデの後から入って来た赤い髪を持っている


「俺と木々と朝子が呼んだんだ
“寝てる暇があるなら白雪と会う”ってゼン言ってたろ?」

「なっ……
それはお前らが寝ろ寝ろやかましいから!」


顔を赤らめながら反論するゼンを遠目にヒソヒソと話す女性陣


『さっきなんて、私を白雪と見間違えたんだー』

「なんだか意地になっててね
なんとな休ませたいんだけど……」


すると、白雪はすっとゼンの近くに立った


「私、今日は帰るよ
次にいつ会えるかわからないけど…今日は仕方ないね」

「書類の署名に白雪の名前書いたりし出す前に少し一緒にいればいいのに……」

「どんな症状だ……」


白雪の言葉に固まるゼンに、木々がボソッと呟く


「じゃあ、お邪魔しました──」

ガタッ

白雪が行くのを引き止めるように、音を立てて立ち上がったゼン


「…卑怯だぞお前ら……」

「「『承知しています』」」


そしてゼンは、白雪と共に執務室を出た


『やっと休憩してくれたねー』

「ゼンは一人で溜め込むくせがあるからなー」

「困ったものだね」


暫く三人で話したあと、ミツヒデはゼンの様子を見に行くと言って出て行った

ミツヒデが様子を見に行くと、ソファでゼンが寝ておりその隣で白雪が一心不乱に本を読んでいた



─執務室─


『木々……ちょっと』

「わかった。気を付けて」


朝子は何かを感じたのか、颯爽と窓から出ていき姿を消した



その頃、とある木の上


「あの赤髪の子が…ゼン王子のご友人……ね」


一人の男が望遠鏡のようなものを片目に当てて城内を見ていた



─────────




「ゼン。もう起きられる?」

「ああ…?あー木々………␣……しら」「白雪はミツヒデが見送りして帰ったよ」

「…あー、そう……
朝子は?」

「それは私も知らない」


寝ていたソファから起き上がり、ふと隣を見ると本が置いてあった


「本…あいつ勉強してたのか……」

置き忘れか?と本を手に取ったゼンの元に一人の男がやってきた


「ゼン殿下。お休みのところ失礼致します!」

「…これは、ハルカ侯爵」




城内の廊下をゼンと木々が前を進み、そのあとをハルカがついて来る


「…あなた様は一国の王子というお立場
親しくする者は特に用心して選ばなければなりません」

「軽々しく外の人間と会うな?
この身と王子の権威を守る為␣␣だろう?知っている」

「わかっておいでなら、氏素性の知れぬ街娘を城に招くのはおやめ下さい!」

「……気に入らない?」


ゼンがくるりと振り返る


「娘が期待しつけ上がります!
殿下のお傍において欲しいだの
それ相応の身分が欲しいだの
国王陛下に紹介して欲しいだの要求されたらどうします!?」

ゼンは壱、弐、参と問題点を上げるハルカを凝視した


「殿下が臣下達に非難されるだけで、何の得も無い!」

「なるほど……では、そんな期待を持ち合わせていない娘だったら?」


ゼンの言葉に、額に手を置き溜め息をつくハルカ


「………殿下……そんな娘がどこにおります……」

「だから、いたらいいのか?」

「いると仰るなら、是非お連れ頂きたいものですな!」

「さっき来ていただろう。それに、朝子もそうだ」

「殿下!!私は言葉遊びをしに参ったのではありません!」

「そうだな…今のは俺が悪かった」


ゼンとの会話にしびれを切らしたハルカが声を上げる

その言葉に、素直に自分の非を認めるゼン


「…だが俺も、遊びで言ってるわけではないぞハルカ侯」

「────…わかりました
一日も早く殿下のお目が覚めるよう願っております。失礼」

バタン

「……………」


ゼンは、ハルカが出ていった扉を無言で見ていた






─────────






「全くあのお方は……あれでは何を言っても無駄だな
やはり娘の方に頼む他ないようだ」


誰もいない廊下で壁に背をあずけ、一人呟くハルカ


「了解」


その言葉を拾った男は動き出す




だが、それを見ているものがいた



『やっぱり、ゼンや私の予想通りってとこかな〜』






ハルカに命(めい)を受けた男が動き出す


そして、誰も知らないところで女が動き出す




誰もいない庭に、ヒラヒラと木の葉が舞っていた








To be continue……

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