赤髪の白雪姫

□第3話
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私は白雪が去ったあと、屋根裏から降りた


『ごめんゼン。毒見役は私のはずなのに……』

意識がないゼンにポツリと話しかける


「……お前が気にすることじゃない」

『え、ゼン?』

「俺は、大丈夫だ」

『でも、ごめん』


私が俯いていると、頭に優しい手が置かれた


「大丈夫だ。死ぬような毒じゃあるまいし」

『うん』

「ああ!よかったゼン!生きてたのか!!」


……いいムードがぶち壊しである


「ミツヒデ、お前俺の生命力なめてるだろ」

『切っても切っても死ななそうなのにね』

私の口からジョークが出たことに明らかにホッとした顔をするゼン



「よし、タンバルンの城へ向かうか」

「白雪も心配だしね」

『んじゃ、お先に行ってマース』


私は一足先に城へ向かった

様子を探るためだ



──────────



『えーっと…見張りがぁ、いーち、にーぃ、さーん、よーん……
ふむふむ』

「朝子!どうだ?」

『見張りがいっぱいいますよー』

「ならそれは」

「俺たちがやるか」

『アイアイサー』


衛兵を倒しながら進んで行く四人


ある部屋から白雪の声が聞こえる


…どうぞ、お好きにお連れください

「却下あ!!」


バァン!とドアを蹴り開けるゼン

……足グセの悪い王子様だこと


「それ以上その娘の耳が汚れるような戯言をはかないでもらおうか」

「ゼン!」
「な、何者だ!!見は…!?」

ラジ王子は蹴破られた扉を見て絶句する


「見張ってますよ」
と、城の見張りを捕まえたミツヒデと木々

「!!」


「ゼン…!」

「よう白雪これ、結んでくれ」
『包帯すら自分で巻けないのか……』

姿は見えないが、朝子の声もすることから彼女も来ているのだと悟る白雪


「え、あ、はい大丈夫ですが…
その前にゼン。体は…」


ゼンは静かに笑った


「! そうか毒を口にした男というのは君のことか!
いや不運な事だった!白雪どのを動けない様にして連れてこさせる手筈だったのだが」

「……おまえが林檎を寄越した張本人か」

「ふん、口のきき方を改めろ男
私ときみとでは身分が違うのだぞ」

「…これは失礼をラジどの。
では面倒だが改めて お初にお目にかかる
私はクラリネス王国第二王子 ゼン」


「………第二…王子!?」


これには本格的に白雪もラジ王子も驚きの隠し用がない様子


「ゼ…ゼン…しっかりして!!私のことわかる!?」

「正気だ白雪
…万一に備えて毒には少し慣らされててね」

『そんなに強い毒じゃないのが幸いだったよねー』


そうは言っているが、ゼンの顔色に変化があるのを白雪は見逃していなかった。

「だがまさか、隣国の王子にやられるとは思いもしなかったがなラジどの」

「…」バッ


ラジ王子は捕まった見張りに勢い良く振り向き目だけで確認をとろうと試みる

木々もミツヒデもそれに気付いた


「本物本物」

「ねえ旦那?」


二人とも見張りの首元に剣を構えて問う


「ほ…本物です!持ち物に紋章が…」


それを聞いて尚動揺するラジ王子


「……フ␣␣ぼ␣␣僕が…
わっ私が毒を盛った証拠など!」

「いくらでもあるのでは?
例えば貴殿の動向や持ち物に
正式な場で真偽を確かめてもよろしいが?」

「そ!それは…」


動揺を隠せないラジ王子
そこでゼンは尚も言う


「では取引をしようかバカ王子
今回のおまえの愚行を公にされたくなければ
────二度と白雪に関わる事もその口で白雪の名を呼ぶ事もしないと誓え」


紋章のある剣を持ち、交換条件を持ち出すゼン


「なぜ白雪どのの…」

「剣を抜こうか?」

「わかった!誓う!今誓った!!」

「──白雪!おまえも言ってやりたい事が山ほどあるだろう
罵るなら今だぞ」

「…うん」

白雪は林檎を拾い上げた


「どうぞラジ王子。見舞いの品です」


落ちていましたよ。とラジ王子の目の前に林檎を突き出した


「─それと、ゼンに早く薬を!」



ゼンは貰った薬を半分飲んだ

「朝子、飲め」

『やだ』

「飲めと言ったら飲め!」

『……関節キスになる』


朝子はそう呟くと、ズボッと残りもゼンに押し込んだ


「ごふっ!
げほっ、げほっ……お前なあ」

「──あの、ゼン」

「なんだ?」

「ありがとう。力を貸してくれて」


白雪を見て、何故正座?と驚くゼン


「…けど、ごめんなさい
私は…ゼンの毒にしかならなかった」


ポカン…と呆気に取られるゼン


「それは…笑うところか?
俺が口にした毒の林檎とお前の赤が一緒だとかそういう?」

「……なんか違う」

ゼンがおどけて見せても顔を上げない白雪


「大丈夫、白雪が謝ることじゃないよ
ゼンが自分で食べたんだから」

「木々さん……」

『私たちが思慮に欠けていた…って言うか、私が先に毒味しなきゃいけなかったんだけどね
ミツヒデなんて、ゼンが死んだら俺も死ぬー!とか涙目になって』

「わかったわかった!悪かったよ
今度から果物はミツヒデに剥いてもらって食うよ……」

「今のそういう話か!?」


遠い目で呟くゼンにつっこむミツヒデ


「──…白雪
俺が森で言ったこと、覚えてるか?」


カタンと座っていた椅子から立ち上がるゼン


「俺としては、今お前といることは運命の方だと嬉しいんだけどな?」

その言葉に目を見開く白雪


「お前が自分で向かった森に俺たちがいて、関わりをもって、互いの身を守ろうとした

それがこの場限りの毒か、これからのつながりかお前が決めればいい」


「……いや…それは…私が決めていいことなの?」

「当然!俺だって自分の道は自分で決めてる
決めて、その道に進めるか否かは自分次第だろ」


『なんか語り始めたよ……』
「偉そう」
「なー?」


後ろでは朝子と木々とミツヒデが様々な感想を言い合っている


「……ゼンって…」

「なんだ?」

「やっぱりすごい考え方をするんだね」

「考え方じゃなくて生き方ですがね」


スッと立ち上がり手を差し出すゼン


「───お前の答えは?白雪」




␣␣␣␣それは␣␣言わば自分の物語


「私は───」



␣␣␣␣願うなら␣␣この出会いの道の先


␣␣␣物語の頁をめくる音が


␣␣␣␣重なる足音のように響くよう



「かっこつけてるけどね
ゼンの目先の運命は城に戻って怒られることなんだよ、白雪」

「で、私たちもとばっちり」

『めでたしめでたし』




またひとつ、物語の頁をめくる風が吹いた





To be continue……

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