赤髪の白雪姫

□第1話
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ここは、クラリネス王国のウィスタル城


「ミツヒデ、木々、朝子、行くぞ!」

「はいはい」

「仕方ないね」

『執務はいいんですかー?ゼン殿下』


城の廊下を歩く、4つの影


クラリネス王国第2王子、ゼン・ウィスタリア

その後ろを歩く、クラリネス王国王子側近のミツヒデと木々

そして、その後ろを歩いているのが私、クラリネス王国王家側近の朝子



「今日は息抜きだ!」

「それ、ついこの間も言ってなかったか?」

「それは私も思った」

『まぁ、やらなきゃいけないはずの事をやり終えてるんならいいんだけどねー』



私たちが廊下を進むと、人影が見えた



「散歩か?ゼン」

「あ、兄上っ!?」

『うわー…あからさまに驚きすぎ』

「おはよう、朝子」


そこにいたのは、ゼンの兄でありクラリネス王国第1王子であるイザナ・ウィスタリア


『おはようございます。イザナ殿下』

「朝子、おはよう」

『…………おはよう。お、お…兄……ちゃん』

「ん。いい子だ」


そう言って頭をナデナデするイザナ殿下……基、お兄ちゃん


「朝子の照れ具合もいつまで経っても治らないな」

「そこが可愛いけどね」


ミツヒデと木々も、朝子のことを気に入っているのだ


『じゃ、じゃあ、行ってきますっ!
行こう、ゼン!!』

「お、おう。では兄上、行ってまいります」


そうして私たちは、よく息抜きに使う空き家へと向かった



「やっぱ馬小屋があるといいなぁ、この家」

『そう?』

「何かあってもすぐ駆けつけられるし」


私は自分の足があるからいいんだけどね



『今日は何するの?』

「そうだなぁ……
よしっ、あの塀を飛び越える!」

『は?』


急に何を言い出すかと思ったら……塀を飛び越える?

こんなこと、一国の王子が言うセリフじゃないと思うんだけど



「よし、ミツヒデ!木々!朝子!先に行ってるぞ!!」

「ちょ、おいゼン…」


ザッ…と綺麗に塀を飛び越えた

かと思いきや、最後の最後で片足を引っ掛けて落下するゼン


ドサッ 「でっ」


「!?ゼン!」


私たちが行くと、そこにはしゃがんだまま右腕を持ってプルプルしている一国の王子がいた


即座に知らない人を見つけ、木に登って隠れた


「ああ!!大丈夫かゼン!?手首捻った!?頭打ってないか!?」


マシンガントークで心配するミツヒデに、呆れたような顔を返すゼン

いやいや、呆れてんのはコッチだからね?


「ゼン!1+1は!?」

「2。あれっ、お前誰だっけ」

「!!ミツヒデだよ!」

「木々、知ってたか?」

「ああ、そんな名前だったんだ」

「木々まで!!ていうかソレ、どんな記憶喪失だよ!」


なに漫才やってんの

と、言いたくなるほどの騒がしさ

あ、木々は騒がしくないよ?


その時、クルッとゼンが振り向いた


「──で、お前はほんとに誰?
こんな森の奥で一体何を?」

「いや私は……その、家出中の身で
人通りのない道を───」


ピッ


ゼンが彼女の被っていたフードを鞘の先で取った


「「「!!」」」

『(リンゴのように赤い髪……)』

「あ」

彼女は、しまったという風に髪に手をおく


「変わった髪を持ってるな」

「そうですね。よく言われます
そ、それよりあなたさっき、落ちて右手を痛めたんじゃ…」


咄嗟に話を変えた……?
ってことは、家出も髪色が関係してる?

私も珍しい髪色のせいで、何かと不便なときがあるため、その可能性が閃いた



「……それがなんだ」

ピクっとゼンの頬が引き攣る


「私薬剤師の仕事をしてて湿布薬をもっているのでよければ…」

「薬?ふーん、いらない」

「はい?」


「毒かもわからんものをいきなり差し出されて使えるか!森の小人じゃあるまいし
他人をあっさり信用はできん。よってもう用はない!

わかったらもう行け」



…………うっわー。すっごい上から目線

あの子、芯がしっかりしてそうだからこういう上からタイプは嫌いそうだな


てか、自分で引き留めておいてもう用はないって……

自分勝手すぎない!?


というか、現に彼女の顔に嫌悪感のようなオーラが出ている



「(まあ、確かにそう…だけど
上からものを言う人間は多い
やかましいな……)」

赤髪の少女はゼンが突き付けた剣の鞘をもって自分の腕に叩きつけた


「!?」


うわぁ、痛そう……


そして、プルプルしている手で自分に湿布薬を貼った


「あいにくと……毒を持ち歩く趣味はないよ」

その言葉に剣を落とすゼン

「ぷっ……
あっはははは!やられたな、ゼン!」

吹き出すミツヒデ


というか、ほんとうに毒を持ち歩く人はほとんどいないと思うのは私だけだろうか


「くくっ…」

「え?」

笑い出すゼンを不思議そうに見る少女


「ハー……そりゃ悪かった
よろしく頼む」

差し出された腕をポカンと見つめる少女


「そもそも、俺の着地失敗は半分はお前のせいだったな

責任をもって痛みが引くまで面倒を見てくれるんだよな?」


ポンと肩に手を置いてそんなことを言うゼン

いや、あなたの不注意で失敗したでしょ
なに責任転嫁してるのよ

なんてことは思ってても言わない



「ここは俺たちの遊び場でただの空き家だ
何日いても問題ないぞ

なぁ、ミツヒデ!木々!」


……何度もしつこいようだけど、一国の王子が空き家を遊び場にしていいんでしょうか

どこぞの餓鬼大将に見えてきた……


「そうだけど……ゼン、そんな自分勝手に事を決め」「ほらな!

とめてもむだだ、と首を振る

というか、ミツヒデの言うこと聞く気なかったよね?



「とりあえず、中入ろうか」

「だな。俺はゼン、お前は?」

「私は、白雪」

「そこのクールな金髪美人が木々
で、さっきの緑っぽい髪のヘタレ野郎がミツヒデだ
あと一人、朝子ってのもいる」



自己紹介が終わったあと、ゼンたち一行は空き家に入っていった


私はこっそりあとからついて入った



彼女、白雪との出会いはこれから始まる物語のはじまりとなった





To be continue……

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