Bloody Eclipse
□第28話 無神長男の記憶
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今話しておくべきだと判断し、
静かに俺は口を開いた。
「俺達兄弟とある一人の女が出会ったのは人間だった頃の、遥か遠い過去だ――」
俺達がいた施設には「先生」という、いわば孤児を管理するための所員の中でも特別枠の存在があった。
そんな地獄を生きるしかなかったある日、任期を終えた先生の代わりに入ったのは一人の若い女。
俺達は驚きを隠せなかった。
何故ならば先生となる奴はそれまで男しか居ないからだ。
だが、どうして女なのかは、すぐにはっきりした。
要するに彼女は―――男どもの性欲のはけ口だったのだ。
そんなこと、普通は逃げようとするだろう。
しかし、彼女は逃げなかった。
孤児院とは名ばかりの地獄を無くすために、と。
そして、彼女は性根の腐った大人達に紛れ一人、孤児たちに優しくし、愛情を注いだ。
毎日何人かずつを山に連れ出し、穏やかな時間を共に過ごした。
俺達に、人としての幸せを少しは知ってほしかったのだろう。
「だから…最後は願ったんだ。」
俺は淡々と話す。
ただ、淡々と。