Bloody Eclipse
□第21話 逆巻長男の記憶
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こいつの存在を知ったのは、まだ俺たちの誰もが狂っていない時代、雪の降る極寒の日だった─────
「寒いなぁ…いくら体温無くてもこれじゃ…ん?」
俺は決まりきった生活から抜け出したくて、隠れるように逃げていた。
子供だったからか家出なんて思いつかないし、出たところで必ず連れ戻されるのは分かっている。
だから、屋敷の中で誰も通らないところを探しては隠れていた。
「こんなところに…離れ部屋…?」
雪が積もった庭の一角。
建物の陰になるようにたてられたほとんど地面に埋まっている箱のような、部屋。
小窓には雪がのしかかってほんの少しの隙間だけが残っていた。
「った………ほんと、容赦ないなぁ…」
中を恐る恐る覗けば、暖かそうで女の子らしいピンク色で統一された、外見とはかけ離れた立派な部屋だった。
そして、コーデリアそっくりの少女が暖炉の前の椅子に座ってじっと火を見つめていた。
よく見たら足が青く変色し、腫れ上がっている。
「いたた…まだ治らない…もう2時間経つのに…」
片目が眼帯に覆われたくまのぬいぐるみを細い腕が寂しそうに抱きよせた。
でも、少女は優しい笑顔を浮かべていて。
「テディ、暖かいね」
「明日は父様が会いに来てくれるって。楽しみだねぇ、テディ」
ふふ、と嬉しそうに笑う少女。
「ん…眠いなぁ…」
少女はこしこしと目をこすっている。
「疲れちゃった。もう寝ようかな…」
そう言うと少女はふかふかの布団に潜り込んだ。
「父様に早く会いたいね、テディ。」
知らせなくてはと思った俺は、見たことをレイジに言いに屋敷へ戻った。