禁断の果実ができるまで
□第36話 信じられなくても
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「待ってよ!勝手に言い残してかないでよっ!」
彼の声はどこにもなかったように自分のだけが響き渡る。
「ソクラテスのバカっ!先生だって結局は一緒でしょ!?アタシのことなんかっ!!」
じわり。涙が伝う。
「シュリーっ!!!」
「っ!何すんの!離せルキっ!!」
匂いがまとわりつくことで腕の中に引き込まれたと分かり、身をよじる。
「離すものか!」
泣き顔なんて気にしてられないくらいに強く押し返すのにびくともしない。
「嫌だっ!離せっ!」
「そう思う限り俺は離さない!!」
「っ!」
「俺は…俺達はお前がいたからヴァンパイアになったんだ!それにお前を手放すほど馬鹿なヴァンパイアなわけがない!」
何でそこまでアタシに執着するの!?
「っわけがわかんない!」
「解らないのは姉さんの方だ!」
そんなこと認めないっ!
「優しくするなら離せよっ!」
「ならば魔力でも何でも使って引き剥がせばいいだろう!それくらい始祖なら容易いことのはずだ!!」
「っ…嫌だ……」
なのに、気付いてしまったみたい…
「嫌だよ…ルキ…」
いや、認めてしまったみたいだ…
「ああ…そっか…アタシ嫌なんだ…逆巻にも月浪にも居場所なんかないから…ここで居場所が無くなるのが…嫌なんだ…だからアンタらを殺したくないんだね…」
二度と世迷い言を言わせないために、殺すつもりだったのに、
「信じられなくても嫌われても…存在していい場所が欲しい……」
殺したくない、理由。
「ならば、消えない居場所くらい、いくらでも俺たちが作ってやる。俺たちがずっとお前の傍にいることでな。」
「…っ」
「例え信じられなくても、傍にいさせてくれ。いや、俺たちは何と言われようが傍にいる…」
再び腕の力が強まった。
「…ルキ……何で震えてるの…」
「一緒だからだ。俺達はお前に、姉さんに…いや、そんな言葉では意味がない………態度で分からせてやるから…今はただ」
…俺の腕に閉じ込めさせてくれ
ルキの小さな声がアタシのカラダに響いた。
信じられなくても…いつか信じたい。
そんな馬鹿らしいことを考えてしまうくらいに。