禁断の果実ができるまで
□第35話 幸せ探し
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「なんで…」
エデンから出られるはずもなく数日後、仕方なく部屋に戻ってきた。
「謝らないでよ……」
『すまない』と書かれたカードと共にアップルパイ、それに角砂糖とボンゴレビアンコとナイフとが机に置かれていた。
「やめてよ…優しくなんてしないでよ……」
ふ、とヴァンパイアの臭いが漂う。
「おねーちゃん、元気でた?」
顔を覗かせてウインクを送るコウ。
「よかった…戻ってきて、くれたんだね…」
アズサも、にこ、と笑いかける。
「姉さん、一人で苦しむんじゃねえよ」
ユーマも心配そうに顔を歪める。
「もうやめてよ…こんな茶番」
「茶番…そんなわけないっ!」
「ア、アズサくんっ!?」
信用なんてできない。
「…」
「俺たちは…ずっと、ずっと捜していたんだよ…!」
「…」
アタシはそのまま黙り込む。
「アズサ!言わなくて良いだろ!」
「俺たちが、お姉ちゃんに優しくするのは、当然なんだ…っ!」
「アズサ!いい加減にしろ!」
「っ…!」
そんな様子に思わず笑ってしまう。
「ふふ…ハハ…ハハハ…ハハハハハハッ…!
…バカじゃないの?」
そうでしかないよね?
「アンタたちみんなバカでしょ!笑っちゃう。」
だって、
「人間上がりとはいえ普通ヴァンパイアが誰かにただ優しくしたいとか好きとかそんな気持ちは無いでしょ?ちがう?」
わざとらしく種族の違いを強調する。
「ああ…アンタたちはヴァンパイアだからかなあ?ほんっと、バカな奴ら。これ以上近づかないでよ…反吐がでるから」
「…ねえ、わかった?さっさと消えてくれない?ウザい」
『本当にそれを望むのか?シュリー』
響きわたる声。
「っ…ソクラテス…アンタ何で刻の間から出て…」
『まあそれはいいじゃないか。さあ、久々の授業としよう。君は本当にそれを望むのか?』
「何でそんなこと…」
『シュウ』
「っ」
『レイジ』
『クリスタ』
『カールハインツ』
『コーデリア』
『アルマ』
『彼らを愛し自分もまた愛されたい、そうじゃないのか?』
「勝手なこと言わないでよ!」
あの頃の小さな幸せすら消されたアタシがそんなこと願ったって無駄なのに。
『ならば君は何故、月浪の手を取った?何故忌み嫌う始祖の手を取った?』
「復讐のために決まってるっ!」
『それなら君はその場で生き残った始祖を駆逐していたはずだ。』
「五月蝿いっ!」
『それにあの万魔殿の封印の解き方を君は知っている。なにしろあれは君が生み出した魔術―――「五月蝿いっ!!!!」
「アタシはっ…愛なんて求めてない!」
「誰にも愛されないし愛せない!だからっ」
『私の教え子はこんなに頭が悪かったのか?そう思っている時点で愛を求めていると気づかないとはな』
「っ!」
『…思い当たる節はあるみたいだな。もう一度考え直してみると良い。ではまたな』
「ソクラテス…!待ってよ!待ってってば!!」