禁断の果実ができるまで
□第39話 夢に見たのは
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「アルマ」
「――様っ!お会いしたかったですわ!」
「私もだよ、アルマ。」
優しい顔、
優しい声、
優しい眼差し。
わたくしの優しい婚約者。
「アルマ、また逞しくなっているじゃないか」
抱き締められた腕の間から見上げる。
「ふふ、将軍家に嫁ぐのですから強くなくては面目も何もありませんわ。あなた様の傍に居るのなら相応しくありたいですしね」
「なっ!…不意打ちは狡いぞ」
頬を紅くしてふくれ面をされる。
「あら、奇襲も立派な戦略ですわ。わたくしの勝ちですわね?あなた様」
つんと膨れた頬をつつけばぶふっと吹き出した彼に笑ってしまう。
「とんだ嫁をもらう羽目になったな。逞しすぎて私が嫁になりそうな勢いだ」
「もう、意地悪言わないでくださる?流石にわたくしでもあなた様が嫁になってしまうのは嫌ですわ!男らしくて優しくてわたくしを大切に想って下さるあなた様が好きなんですもの」
素直に伝える本当の想い。
「…馬鹿、可愛いこと言うなよ…ん…」
「んっ…ふ…ふぁっ…」
軽いキスをされたと思えば段々と深くなっていく。
嗚呼、心地良い―――
「…兄上、姉上。人前でやめてくれないか。」
「ほんとだよ…広間でイチャイチャするのはやめてよね…」
じとりと視線を送られる。
「っカルラ、シン!いつの間に…!」
「『私もだよ』くらいだろうか。」
闇の眷属なのに熱が上がるような感覚。
「カルラっ!殆ど最初からじゃないの…もうっ!」
小さな弟たちは意地悪に微笑んでみせた。
「でも…兄さんと姉さんが仲いいのはオレ、嬉しいよ?」
「ああ、兄上と姉上が幸せそうなのは私も嬉しく思う」
その言葉に堪らなく幸せを感じる。
「ふふ、ですって」
「…やめろ、顔見るな」
「真っ赤ですわ、あなた様」
「ったくアルマ…見るなってば…」
―――――――――…………
はっ!!!!!
「っ…夢……」
珍しいわね…わたくしが夢を見るなんて。
「婚約者…あなた様…将軍家…カルラとシンの、兄…?」
「…アルマ、どうした」
リビングに入ればカルラは生ハムを黙々と口に入れながら声を掛けてくる。
「あなた様…将軍家…」
「…アルマ……」
「!!姉さん、もしかして…」
「ん?あら、どうしたの?シン」
「ああ!?…いや、なんでもないよ、姉さん」
「そう。さて、サーベルでも磨いてくるわね」
そう言ってわたくしは稽古場に向かった。
何だろう。
何か気が晴れない。