禁断の果実ができるまで
□第32話 あの日さえ
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なんで?
なんでアタシに優しくするの?
地位も金も存在理由もないアタシになんで笑いかけるの?
『大丈夫?』
こんなことを考えているとふいに思い出したあの日。
『まったく穀潰しは…彼女は眠っていただけだというのに大袈裟ですよ。』
『…?アタシは…』
『君は1週間目を覚まさなかったんだよ。頭蓋骨割れてたんだからまだ起き上がれないと思う…。あっ、僕は逆巻シュウ。こっちが…』
『逆巻レイジ、貴女の義弟です。何かあれば何なりと』
『義弟…?』
『うん、僕たちの母はベアトリクスだから。』
『あっ!そうだ、レイジと林檎剥いたんだ。食べる?』
『殆ど私が剥きましたけどね。どうぞ。』
『うん。シュウちゃん、レイちゃん、ありがと。』
彼等とはじめて出会った日。
あの日さえなければよかったのかな…。