禁断の果実ができるまで
□第42話 これが日常
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「ねえルキ」
「何だ?」
「皆でここを出ない?魔界でも下界でもいいから別のとこで暮らしたいんだけど」
「またか…無駄だぞ。あの方の命によりお前は此処にいなければならないんだ。」
「なんでアタシが指図受けなきゃいけないの?アイツは父親でもないしそもそも血の繋がりもない。種族も違うのになんでアイツの命令なんか聞かなきゃなんないの」
幸せを導き壊した奴の言いなりなんてごめんだよ。
姉さんはいつもそう言う。
「お前が此処にいる以上従わなければならない。」
「うっざ…ルキはいっつもそれだよね。腹立ってくる」
「何とでも思え。」
姉さんの頼みを聞いてやりたい気持ちはある。
だが、あの方に生かされている俺はあの方に従わなければならない義務があるんだ。
「どーん」と言う声とともに勢いよくリビングのドアが開く。
こんな入り方をするのはコウの奴しかいない。
「仕事は終わったのか?」
「うん!ルキくんたっだいまー!」
「コウ五月蝿い」
「おねーちゃんも、たっだいまー!」
「何がたっだいまー!なんだかねぇ。五月蝿い見苦しい」
「あっ、そうだおねーちゃん!これ見てよ!この雑誌、俺の特集載ってるんだ♪」
「自己中うざい」
姉さんの罵声をすべて無視して話し続けるコウ。
「もー、人のこと言えるの?」
それはそうだ。
「何か文句でもおありですかぁ?んふ」
「ないよ!いやないです!」
流石にコウも始祖には勝てないと分かっている故に悪ふざけは終わらせたらしい。
「またコウの奴やってんのかあ?ったく懲りねえな。」
大量の野菜や果物で手がふさがっていたのかこれまた勢いよくドアが開いた。
「そういうユーマくんも毎日毎日畑行ってくれば林檎ばっかり…飽きちゃうよもう!」
俺がとってこいと言っているんだから当たり前だろう。
「ああ!?コウ、テメここで育った林檎のよさを舐めてんのか!?」
「ケンカ、しないで…コウ、ユーマ…」
いつの間にか入ってきていたアズサがいつものごとく兄2人をなだめる。
まったく…
「アンタら懲りないねえ」
思っていたことを姉さんは言ってのけた。
だが姉さんも大概だと思うのは俺だけだろうか?