禁断の果実ができるまで


□第38話 サガシモノ
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「ぬぬ…」

「見つかりそうかしら?カルラ」

唸る兄さんに姉さんが作業を止めずに話しかける。

「そういうアルマこそ見つけたのか」

「駄目ね…他の宝物の思念が強すぎて全く分からないわ」

今にも切れそうなくらい張り詰めた空気を打開すべくオレは手に取ったものを掲げてみせた。

「コレ懐かしいなあー。見てよ、兄さん。兄さんとオレで母上にあげた髪飾りだよ!」

母上が大切にしていた髪飾りを見れば少しは力が抜けるんじゃないかとオレなりの気遣いだったのに、

「…シン、無駄話をするな」

「っ…分かったよ……」

あえなく崩れ落ちた。

「カルラ、本当に意地悪ね。少しくらい付き合ってあげたらいいじゃないの」

「貴様も無駄口を叩くな」

「あらやだ。わたくしはカルラとシンのことを思って言っているのよ」

「貴様死にたいのか?」

「わたくしを女だからって舐めないで下さる?これでも戦術は始祖最強なのよ」

「貴様、王に刃向かうつもりか」

「あーもうっ!いい加減にしてよ!シュリーが居ないからってピリピリしすぎ!もうオレ辛いよ!」

耐えられず叫ぶ。

「「五月蝿い」」

ねえ何なの何でオレ責められてるの?なんか悪いことした!?

「…そもそもアルマが生き残ったのが悪い」

「そうね、そもそも始祖王がカルラなのが悪いわ」

「そもそもアルマが無駄に賢いのが悪い」

「そもそも王の地位に囚われてるカルラが悪い」

こうなるともう止まらない。

何でこんなに兄さんも姉さんも頑固すぎるんだよ!

「そもそもアルマが逞しいのが悪い」

「そもそも怠惰なカルラが悪い」

「そもそもアルマがシンに構うのが悪い」

「そもそもシンに素直じゃないカルラが悪い」

「そもそもアルマがシンを甘やかすから悪い」

「そもそもシンに厳しすぎるカルラが悪いのよ」

「あー!もういい加減にしてよって言ってるじゃん!いっつも兄さんたちを止めにかかるオレのことも考えてよ!!」

「…許せ、シン。でもアルマが悪い」

「…悪かったわ、シン。でもカルラの所為なのよ」

ほんっとに面倒臭い兄たちを持ってしまったみたいだ。

「こんなとこ早く出てシュリー見つけて存分に殴ってやる…っ!」











 

……………


「ん?…気のせいかな……」

なんか背中がぞくっていうかなんていうかそんな感じしなくもなかったんだけど…魔力の歪み?

「まあいっか。…それより早く見つけなきゃ…っと」

「姉さん、コーヒー淹れたぞ」

「ルキ…アタシのシルクリボン隠したでしょ」

こいつがそんなことしない奴だと分かっているのに今までの対応と同じ様に接してしまう。

でも、それどころじゃない。

いつも首もとに提げている愛用の赤いシルクリボンが何故か無いから。

いつ誰にもらったかは覚えていないけど、幽閉されていたときも手放さなかった大切なリボンなんだ。

「知らん」

当たり前だ。けど突っかかってしまうんだからしょうがない。

「何日かアップルパイを食べなければ鼻が利いてすぐ見つかるようになるだろう?我慢したらいいじゃないか」

ルキは溜息をついて窓の端に寄りかかった。

「嫌だ面倒臭い」

ルキのアップルパイが食べれないとかアタシは耐えられない。
それに何日も待てない。

でもアタシのせいでアタシは素直に言えない。

アタシはルキのアップルパイが食べ物の中だと一番好きなんだけどね。

何か思い出さなきゃいけないことを思い出せそうになるから。

「はあ…仕方ないな。つくづく思うがお前は本当に年上なのか?」

「馬鹿にしてんの?ルキ」

「そんなわけないだろう」


「お姉ちゃん、ルキ、コーヒー冷めちゃう、よ…」

「アズサまで…勝手に入んないでよ」

「ねえ…これ…お姉ちゃんの…?」

「…なんでアンタが持ってんの」

「薔薇園に落ちてた、よ…」

「はあ?」

行ってない場所に落ちてるなんて。

「…って…そういうことねえ…」

カールハインツの悪戯か…暇つぶしにそういうことすんなよ面倒臭い。

「ねえ、コーヒーは……?」

アズサは首を傾げた。

きっとこれは引下がらないだろうな。

だってアタシが思うにアズサが一番しつこくて面倒な奴。

でも別に嫌いじゃない。

「仕方ないなぁ…付き合ったげる」

悪戯にはアズサに免じて目をつぶるとするか。

そんな、素直になれない今日この頃。

 

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