禁断の果実ができるまで
□第30話 優しい弟
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「っ姉さん!!」
走り去った彼女を見失ってしまった。
「あれー、ルキくん、血相変えてどうしたの?」
「コウ、あいつを見なかったか!」
「え?知らないよ。何かあったの?」
心配そうにする弟に迷惑をかけたくない。
「…いや、何でもない。悪かったな、コウ。」
その思いで抑え込んだ。
「ねえルキくん」
「なんだ」
「なんであのお方は…」
言いたいことは分かる。だが
「言うな、コウ。全ては必然なのだから」
「ねえルキくん、隠さないでよ。俺たちはそんなに頼りない?」
そんなことはない。紅く光るコウの右目に向かえば悟られた俺の気持ち。
「だったら頼ってよ!ルキくん!!」
「…お姉ちゃんも、ルキも、心が泣いてるから…ルキ、話して?」
「ったくこれだから俺らの兄貴はよお…黙られる方が迷惑だっつーの」
俺の弟は優しい。
ありがとう。