禁断の果実ができるまで
□第29話 抉られる
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「ああ、お前か。クッキーは上手くできていただろう?我ながら中々に出来ていたと思うんだ。」
ルキが笑んだ。
捨てたことに気づいているくせに。
「話しかけないでくれない?…アンタが一番うざい」
平然と部屋に入ってくる奴。
特にこいつと居ると臭くてつらい以上に、
…傷が疼く。
「人違いしたことを根に持っているのか?仕方ない、また明日も何か作ってやろう。」
「…うざ……」
「あの方の命でもあるからな、良い菓子を特別に作ってやるからいい加減気を許せ。」
カールハインツめ…
きっと父様は高みの見物でもしてる。
「近付くな…アタシに構うな…」
『半端者、』
陰が重なる。
「アンタは…アイツそっくりなんだ…これ以上近付かないでよっ…!」
思い通りになりたくなんかないけど、これだけはどうにも出来ないんだよ。
じわりと滲む過去の自分から逃げる。
アタシは部屋を飛び出した。