禁断の果実ができるまで
□第24話 扉
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「はあ…」
ここも駄目か。
エデンのあらゆる扉を開けてみたけどどうやら外には出られないようになっているらしい。
「どーしよ」
カルラたちはどうせアタシの居場所は分かってるから良いにしても。
恐らく父様のせいで魔力も押さえ込まれてるし、何だか変に過去の思い出がある空間は居心地悪い。
「ルキくんってば意地悪なんだからー!いいじゃんボンゴレちゃん作ってよー!」
待て、この声。
「コウ、昨日も作ってやっただろう」
こんな若い男が、
「ったく、お前ほんと偏食だよな…野菜も食えよ」
エデンにはいただろうか?
数百年経ってもここは使用人が入れ替わることはほとんど無いのに。
「ユーマくんてば分かってないなあ〜!特にルキくんのボンゴレちゃんはこの世でいっちばんおいしい食べ物なんだよ!」
しかも…この匂い。
「はあ…仕方ない。作ってやる。だが明日は作らないからな」
魔物臭さに人間臭さが混じっている。
「ルキ…ふふ、優しい……あ、」
目が合った。間違いない。
「やっぱり…人間上がりねえ」
道理で臭い。
大方父様がやったんでしょ。
さっさと逃げよう。
…と、思ったのは良いけど遅かった。
「どしたのアズサくん。
…えっ…おねーちゃんだっ!!」
「は…?」
待ってアタシの脳が珍しくついてきてないよ?
「……姉さん…本当に、姉さんなのか…?」
なんで揃いも揃って4人で目かっ開いてんのかねぇ。
「間違いでしょ、アタシの兄弟はさ…「おねーちゃん!!」
犬のようにすり寄ってくる金髪。
「姉さんもヴァンパイアにしてもらってたんだな!これでまた「……臭いから離れろ」
「えっ」
「んふ、聞こえないの?…離れろっていってんの。アンタたち、臭い」
「おねーちゃん…覚えてないの?このコウくんを?」
「アンタなんて知るわけ無いでしょ?だって、アタシはヴァンパイアでも人間上がりでもないもん。」
「……姉さん……もしや…」
「ああやだ〜!人間上がりのヴァンパイアの匂いってこんなにきつかったっけ…うざったくってつらいー!」
「やはり…始祖、なのか………?」
「始祖…って、あの、始祖…?なんで?でも、始祖は幽閉されてるって…」
「五月蝿い…殺されたいの?」
生憎、手を使うことが出来る――――――あの地獄を味わった頃とは違って。
「死にたきゃ殺してあげようか?死にたきゃ、の話だけど」
「「「「………………」」」」
「…ねえ…なんで、辛そうなの…?」
沈黙を破ったのはベレー帽の青年だった。
「…アンタたちが近くにいるからに決まってるじゃん」
突然の質問に率直になる。
「そうじゃなくて…お姉ちゃん、辛そう…」
なお心配そうに顔を覗く。
「うざいなあ、もう近付かないでくれる?」
もうそろそろ別の所に行きたい。物理的に息が詰まる。
「…それで、近付いたら…傷、付けてくれるの…?」
「…なにこいつ」
―――傷付けてくれるの?
どこかで聞いたことあるような言葉。
まあ、気のせいか。
こんな奴、知るはずがない。
「…アズサ、行くぞ。
すまなかった、人違いだ。知り合いにそっくりだったものだから」
「っ…」
こいつ…
『半端者、』
嫌だ…思い出したくない。
「…もう、姉さんには二度と会えねえのかなあ…わかってっけどよお…」
「ユーマくんがメソメソするなんて明日は雪かな」
「元気、だして…ユーマ」
アタシの記憶など知らないヴァンパイアたちは仲良く去っていく。
扉が声をかき消していった。