禁断の果実ができるまで


□第22話 エデン
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……………―――愛しき我が娘

歯車を動かす、我が娘よ……






「…!」

はっと目を開けた。

「…うっ……痛…」

心臓が軋む。

「…これくらい……痛くないはずなのに…くそ…………」

ぎゅ、と胸を押さえると徐々に落ち着いてくる。

すると段々、周りの景色に気づく。

「ここ………」

見たことのある景色。

限られた者しか立ち入れない場所。

“彼”が居る場所。

つまりは…

「エデンの………刻の間…」





「やあ、起きたかい」

「…父様、いや、カールハインツ……」

エデンの主は目を細めた。

「どちらでも構わないよ。それにしてもシュリー、君は本当に美しくなったね。」

「社交辞令をどーも。ま…嬉しくなんかないけどねえ」

こんな、母様に似た顔かたち。

深紫の髪に切れ目、すっと通った鼻筋。

アタシは大の嫌いだ。

愛しい母様の容姿はアタシに必要ないもの。

「まあいい。君に頼みたいことがあるんだがね」

「…聞く気なんか無いよ?」

ふっと小さく笑うとカールハインツは懐かしむようにチェスの駒を弄る。

「おや、ずいぶんと強気になったね。昔はシュウに水をかけられて泣くような子だったのに」

「うざいなあ…うざい。今すぐ殺してやりたくなるよ」

そんな過去を奪ったのもアンタだ。

「残念だがまだ時期尚早なんだ」

わざとらしく肩をすくめる。

「…はあ……しょーがない、話聞くだけ聞いてあげる」

何だか相手するのもめんどくさくなってきた。

「ふふ…実は逆巻家に戻ってもらおうと思ってね」






「は……………?」






「命令と言ってもいい。このエデンに居てほしいんだ」



“始祖の好きにはさせない”

無言で語られている。

まるで始祖をも自分の駒であるかのように。



「アタシが逆巻に戻る?…それは母様を殺したから?逆巻から追い出したのはアンタだっていうのに?」

「全て必然なんだよ」
 

「必然?」

「…いずれ分かるよ。」

そう言うとつかつかと部屋を出て行ってしまった。

 

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