禁断の果実ができるまで


□第21話 届いた手紙
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「…ん?…なあに」

くうん、と一鳴きしたアタシの使い魔。

頭を撫でてやれば従順な狼は気持ちよさそうに眼を閉じる。

「…てか何これ」

幽閉されている万魔殿に誰が届けるはずもないのに使い魔が持ってきたもの。

「うーん…凄い魔力…」

宛名もない。差出人も書かれていない。

「シュリーっ!またオレのナッツ食べただろ!」

ずかずかとリビングに入り込んだシンも、この空気に気付いたのか一瞬にして顔を歪めた。

「…何だよ、これ……」

「…ねえシン、カルラと姉さまは?」

「…いる」

いつの間にか兄達はソファに座っていた。

「その禍々しいほどの力…気付かないわけがないわよ。」

「だよねえ…」

眉を寄せながらも、ふん、ときれいな手を向けられる。

「貸せ」

封筒を差し出すとカルラはゆっくりと受け取った。

「カールハインツめ…」

「はあ…始祖の好きにさせないってことね」

アルマも珍しく眉間にしわを寄せている。

「ねぇ、兄さん、その封筒どうするんだい?」

「捨てるに決まっている」

ふっと封筒を持たない手の側をかざした。

「…」

「…………」

けど、何も起こらない。

「…燃えない……?兄さんの力で、何で」

カルラの力で消されるはずだった封筒は変わらず原形を留めている。

「仕方がない…貴様、中を見ろ。」

再び手元に戻ったそれ。

「気を付けなさいよ、シュリー。何があるか分からないのだから。」

もう一度間近で見る。

「もう…心配性だなあ、姉さまは。…わかってる」


 

「じゃあ、開けるよー…」

恐る恐る封を破る。








「…なんだ、なあんにも無いじゃん」

封筒の中身は空だった。

「どうする?これ」

ひらり、角を持ったまま揺らす。

「…ん…?待って、シュリー」

「どしたのシン」

珍しく反抗的でない物言い。

いつもなら突っかかってくるような言い方しかしないのに。

「これさ…封筒の内側が見えるように開いてみてよ」

まあ、何かあったら一番に被害を受けるのがアタシになるだろうからなんだろうけど。

「ん…こんなかんじで開けるの…?」

完全なる始祖様にやらせようなんて面倒臭いだけだから今回は従うけど。

「そうそう」

ビリビリと端を開くように糊を剥がしていく。




「……っ痛…うざいなあ…」

指から血が垂れてきた。どうやら角で切ったらしい。

仕方なしにふさがっていく傷を見ながら自分の血を舐めとっていく。

刹那、

「っ!!」

心臓が高鳴る。

「う…くっ…」

何、これ…

「ぐっ……は…………」

その場に膝をついて屈む。

「シュリー!?シュリー!!」





―――――――――…








意味…わかんない……………













 

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