Bloody Eclipse


□番外編 先生
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「ふう…」

授業が終わって、放課後。

きっと無神の誰かが迎えに来る。

───逆巻の家に戻されないために。

どっちにしても私が逃げられないのは承知してる。

大人しく待つことにした。

「どしたの?小森さん」

「ひっ!」

私以外誰もいないはずの教室に、近づく音もなく突然肩越しに聞こえたのは、思いもよらない人物だった。

「可愛くない声。そんなに驚かれたら先生ショックだよ?」

膨れ面をしてちょんちょんと私の肩をつつく。

「先生…ってなんで、シュリーさんが先生してるんですか!?」

「耳障りだ、家畜。」

「ル…ルキくん!?いつの間に…!」

「姉さんと来たのだからさっきから居たが?」

「あ、そういえばユイに言ってなかったね。アタシがここで英語の先生として乗り込む、っての」

「驚かしてやろうと言ったのは誰だ…」

「てことで!アタシは嶺帝学院高校の英語科の先生して3年目ってことになってるからよろしく!ユイのクラスは明日からかな。初めて、ってことにはならないから変にキョドらないでね?」

え、えええー!?

思わず心の声が出そうになるが、必死で押さえる。

「おい雌豚!さっさと帰るぞ!」

「きゃ!ユーマくんまで…!」

「あ?まで…って…うわっ、マズい!」

「ユーマ?帰さないよ」

がっしり掴まれて動けなくなったユーマくん。

「あ、いた…シュリー、先生…これ、さっきの課題…」

「アズサ遅い!授業中に出せなきゃ意味ないじゃん!まあでも、やらないより偉いよ。…全部間違えてるのは置いといて」

それでも苦もなく平然としているのは彼女が始祖だからなのか。

「ていうかユーマ!アンタに至っては課題白紙だったんだけど!分かんないなら聞きに来いっていつも言ってるでしょ!」

大男を片手で押さえ込んでいるあたりが、はたから見たらかなり恐ろしい。

「おい、ユーマ。どういうことだ」

「げっ…ルキ…」

「あの課題がそんなに難しいわけないだろう。サボったということなら許さないぞ」

「ルキ、ユーマは馬鹿なんだから分かんないなら聞きに来いって言うべきでしょ。ていうかそう言っといてたよね、アタシは。ね?ユーマ?」

「うぐ…」

「イブ、先、帰ろ?多分、長くなるから…」

「え…?ま、待って…」

だが二人に立ちはだかられてユーマくんは私たちを追いかけることは叶わなかった。


「さてユーマ」

にやりと笑う兄。

「サボった分きっちり勉強してもらおうか、ね?んふ」

そして同じく姉。

「おい待て!アズサ!ユイ!置いてくなあああ!!」






こうしてユーマくんはその日、姉と兄に散々怒られながら勉強したそうです。






 

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