Bloody Eclipse
□第9話 狼の噂
1ページ/1ページ
シュリーさんが現れて一週間経たないうちのことだった。
「は?狼?」
「うん、最近狼がうろうろしてるってクラスの女の子たちが言ってたの」
日本に狼は既にいないはずなのに、クラスでは夜な夜な現れるというそれの話で持ちきりなのだ。
頼まれ仕事があって3年生の教室に行ったときに先輩方もそんな話をしていたし、養護のラインハルト先生にも何故か『狼には気をつけなさい』と言われた。
「もしかしてエム猫ちゃん、怖いの?」
「ううん、でもちょっと気になって……」
怖くないと言えば嘘になるけど、言ってしまえば現実になるような気がしてならなかった。
「んなもん、ただの噂だろ?」
そう言われればその通りなのだけど、最近では夢にも出てくるようになった。
だから、それが正夢にならないという少ない確率を祈るしかない。
「だが、一応対策は練っておこう。魔族である事は確実なのだからな。」
「それもそうか…おいアズサ、紙とペン用意しろよ」
「うん…これでいい?」
「ああ。家畜と姉さんも話は聞いておけ」
すると今までソファで黙って聞いていたシュリーさんが突然立ち上がった。
「よし、逆巻家に行くよ。ルキ、コウ、ユーマ、アズサ、小鳥ちゃん。」
「どうして…?」
「話し合い。」
話し合い?
心当たりがあるというのだろうか。
けれど、笑みを浮かべたままで真意までは読みとれそうになかった。