Bloody Eclipse
□第1話 序章
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そんなに遠くない昔。
ヴァンパイアに恋された人間がいた。
人間もまたヴァンパイアを愛す
…わけがなかった。
これは、イブがアダムを選ばなかった世界のおはなし―――
「ユイ」
私を呼ぶ男の声にびくりと身体が反応する。
「私用事があるのでまたあとでっ!」
とっさに逃げ出す私。
いつもなら逃がさないって捕まってたけど、そんな気分ではなかったようで少しだけ安堵した。
…気まずい。
答えなきゃって思うけど、うまくまとまらない。
―――事の発端は月蝕の夜。
私の血を吸いながら本音を打ち明けてくれた、シュウさん、レイジさん、アヤトくん、スバルくん、カナトくん、ライトくんにルキくん、コウくん、ユーマくん、アズサくん。
誰にも渡さない。俺のもの。
不器用ながらも私を好きだと言ってくれた。
私の血が目当てかも知れない。
私が要らなくなったら捨てられるに違いない。
そんなことはないって分かってるつもりだけど、疑惑が消えない。
だからその想いに答えられずにいた。
『一番分からないのはあんたの本心だ』
シュウさんにもそう言われてしまっている。
その通りだ。
私は未だ結論を出せない。
誰が好きなのか、誰を愛したいのか、誰に愛されたいのか…分からないままだった。