禁断の果実ができるまで
□第4話 義理の母
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「シュウ」
「母上…」
玄関の階段の先にいたのはシュウとレイジの母、ベアトリクスだった。
「貴方は跡継ぎなのですよ、余計なことはせず、今は勉強に励みなさい。あと1分で天文学の授業です。お行きなさい。」
「は…はい」
「シュウちゃん行っちゃうの…?」
「シュリー、シュウは跡継ぎなのです。我慢しなさい。」
「はい…」
「それなら、シュウの勉強が終わるまで一緒に本を読みますか?」
「ありがとうございます、ベアトリクス様!」
精一杯の作り笑いで答えた。
ベアトリクスは他人の子であるアタシにも優しくしてくれる。
だから母コーデリアに冷たくあしらわれていることを知られたくない。
足手まといになりたくないんだ。
「ごめんね、シュリー。また後で遊ぼうね!」
「うん!」
たたっと走り出すシュウに手を振った。
「さて、シュリー、本を持っていらっしゃい。ガーデンで待っていますよ。」
柔らかく微笑んでベアトリクスはアタシの頭を撫でた。
「はい。ね、レイちゃんも行こう?」
これ以上彼らに迷惑をかけないようにと繕う。
「はい、姉上。今日は何を読むおつもりですか?」
「んふふー、これ!」
ずしっとした本を書斎から取り出す。
「また『失楽園』ですか。本当に姉上はそれがお好きですね」
「レイちゃんは?」
「医学書です。」
「また?レイちゃんもほんとに医学とか薬学好きだねぇ」
「お互い様、ですね。」
ふふっ、と小さく笑い合った。