禁断の果実ができるまで
□第2話 臭い、上
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…ね……ねえ…ねえ…
……ねえ
「ねえ、シュリー!」
名前を呼ばれ、はっと目を開けた。
「あ、シュウちゃん…」
心配そうに見つめる、5歳の弟。かさ、と言う音で茂みに落とされたと知った。
「大丈夫?…またリヒターに突き落とされたの?」
とっさに笑顔を作り上げる。
「そんなのいつもじゃん!大丈夫だよ、んふ…っ!」
「っ大丈夫!!?」
とっさに駆け寄る弟に近寄らせまいと腕で制す。
この臭い。
「…うっ!…く…ハア、ハア…」
いつもの臭い。
獣臭いような、魔物臭いような、臭い。
母様―――コーデリアとアタシ以外、ここはそんな感じだ。
今だって、臭いで鼻がもげそう。
「ねえ…本当に大丈夫?」
「シュウちゃん、アタシは大丈夫だよ」
「全く…姉上はいつもそうですね。大丈夫には見えませんよ。」
シュウの声に反応して来たのか。
「レイちゃん!大丈夫だってば〜!…それにしても臭いねえ」
彼らはこの臭いが自分たちからも発せられていることを知らない。リヒターの叔父様臭とでも思っているのかどうかは知らないが。
「あ、じゃあ水持ってくるよ!顔洗ったらすっきりするよ、きっと!…はい!」
「ありがと〜シュウちゃん♪あっ!!」