禁断の果実ができるまで
□第15話 復讐
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「見つけたわよ」
連れてこられたのは万魔殿のダンスフロア。
正直、良い思い出なんか無い。けど今はこの絢爛豪華さがアタシの怒りを抑えているように思える。
入り口でじっとフロアを見つめるアルマの横顔は、やはり表情が読めない。
「ねえ、アンタはなんで王家の名を持ってるわけ」
「わたくしのことは姉さまとお呼び」
視線も表情も変えずに思わず背筋が伸びるような威厳を放った。
「…姉さま、なんで」
「罪を償うため、かしらね…まあいいわ、やっと来たみたいだし」
アタシはその声につられてフロアを再び見た。
窓の近くに、1人。毛先が紅く染まった髪がマフラーで幾らか隠れている。
「…ああ、アルマか。」
「月浪カルラ…」
始祖王。アタシの地獄の始まりを早めた男。
「…私が憎いか、貴様」
けど
「別に。アンタがギースバッハ様を殺さなくてもアタシに地獄は訪れたはずだもん」
何だか憎みたくなかった。
「カルラ、この子をわたくしに預からせて」
「ふむ…構わんと言いたいところだがそうはいかんな」
「跡継ぎならこの子は産めないわよ。中途半端なヴァンパイアの血で突然変異…子孫が残せない身体になってる。」
「は…?」
思わず声が出たのはアタシだった。
「…やはり始祖の未来は絶たれるのか」
「この子の中に流れる4分の1のヴァンパイアの血が始祖の絶滅に繋がる、ね…これもきっと罪のうちね」
「絶滅…」
――まだ始祖は絶滅してなかった。
その事実に悔しさを覚える。
だけどここでこいつらを殺したくなかった。
「仕方ないわ、もう諦めましょう。これも運命よ」
はあ、とアルマは溜息を一つ落とした。
「…コーデリア」
振り返った始祖王がアタシを見つめる。
「なに、母様がどうしたわけ?」
「あの心臓さえあれば…始祖は跡継ぎを残せる」
「まあ…わたくしは始祖の戦力を担っていてこの子は復讐の鍵を握っていればそうなるわね」
「仕事よ、シュリー。貴女、確か操作能力あったわよね」
「まあ…使えるか分かんないけど」
「他人を操る、か…まあ良いアイデアだな」
「生憎万魔殿からわたくしたちは出られないもの。直接殺しはできないけど…いいかしら」
いっそ逆手に取ってやる。
「いいよ、アタシも一番良い考えがあるから。」
さあ、突き落としてあげる。
アタシの、愛を全身で感じればいい。
愛しい愛しい、アタシの母様。