禁断の果実ができるまで


□第19話 愛しい父様
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嗚呼、どうしてなのかしら。

動かない幾つもの肉塊となり果てた父を見下ろした。もう甦ることもない。

病に倒れた母を見捨てて、魔王の娘と愛をささやくなんて。

貴方の所為で母は奇々怪々な病に倒れたのよ。

死ぬ間際にも母はわたくしではなく貴方を想っていたというのに貴方は…。

貴方と、あいつ…コーデリアが幸せを崩した。

赦せない。

幼い頃から剣術を習い、今は勝てる者もいないほどの腕をつけた最年少女騎士として王族に仕え、数々の不死の命を葬ったわたくし。

だから本来誰かを憎む立場ではない。

憎んではならないのに、貴方を、コーデリアを赦せない。

「哀れな人ね」

娘に殺される気持ちはいかが?

毒づきながら再び肉塊を見やる。

そのときひらり、茶封筒が宙を舞った。

どうやらジャケットに仕舞われていたようで。

走り書いたような字だ。


『私の愛しい妻よ

どうか赦さないでくれ

私の罪は闇より深いから

王の御友人をも裏切った私を


私の愛しい娘よ

ひどく汚れた父を許さないでくれ

だがあの子をお前が大切にしてほしい

私のせいで罪無きあの子も孤独になってしまったから』

…分かったわ、

貴方を赦さないためにわたくしは我が妹を愛しぬきましょう。

それはこれでも貴方を、

父様をわたくしが愛していた証…
 

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