禁断の果実ができるまで


□第10話 事実
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なんでアタシ生きてるの。

首を切り落とすならさっさとやってしまえよ。

死にたい。

でも死ねない。

死に逝く始祖の傍らで死なないアタシを呪おうか。

ジャラ…

この牢屋に人が来ないようになったのは良いけど、鎖に繋がれたままじゃ死にたくても死ねない…

喉は乾きに乾いて感覚がしなくなったのが幸いだ。

カシャン。

到底開くことの無かった扉が開いた。

「やっと見つけたわ、わたくしの愛しき妹。」

「月浪アルマ…」

ここにアタシを閉じ込めた始祖、その頂点の娘。

「そう、わたくしは月浪アルマ。…まさかこんな所に放置されているとは思わなかったわ」

「ねえ…何しに来たの?火炙り?水責め?鞭?殴り倒し?それとも「そんなことする訳ないじゃない」

「じゃあ何?王族のお遊びに付き合えと?」

「あら、わたくしが王族ですって?冗談じゃない、名前だけよ。」

「は…?」

「取り敢えず解くわよ、その鎖」

アルマが腰にかけられたサーベルを抜き取った刹那、

ぱんっと言う音が響いた。

「う…」

どさり。突然の解放に足が利かず、座り込んでしまう。

「改めて自己紹介するわ。わたくしは…シュリー、貴女の実姉よ。」

アルマは目線を合わせるようにしてしゃがみ込んだ。

「何、始祖の王家がアタシの家族とでもいうわけ?」

「違うわ」

「じゃあ実姉ってのは何なの?」

「そのままよ」

「そんなのおかしいでしょ。アタシはヴァンパイア。アンタは始祖。これは事実だよ?」

「貴女はヴァンパイアなんかじゃないわ。ファーストブラッドなのよ。」

「何を言いたいわけ?アタシはヴァンパイア、吸血衝動だってあるし始祖なら出来る変化だってできないんだ。」

本当だ。新月には喉が渇いて仕方がない。変化だってしたことないし、悪戯に『蝙蝠に変化しろ』と脅されたが出来なかった。

「でも、ご覧なさい。今の貴女の姿は始祖そのもの。試しに狼にでもなればいいわ」

 

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