禁断の果実ができるまで
□第7話 絶望は死ではなくて
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『散々な様子だな』
『くくっ、滑稽だ。腹に大穴開けて吊り下げられてるのだから。…おい、起きろ』
「っ…くっ…」
脚が届かない。腕も動かない。腹部が無いような心地がする。
ああいっそこのまま死ねたら…
『半端者、誰が目閉じろって言ったんだ?』
半端者…?有り得ない。アタシは純血のヴァンパイアだ。
その言葉を削ぎ落とすかのように傷をなぞる刃が刺さっていく。
「…ぐっ…かはっ…!」
ポタ…ポタ、と足元が真っ赤に染まったかと思うと赤黒く変色していく。
始祖の病――エンデツァイトの流行でギースバッハが死んでしまってからこうして残り少ない始祖はアタシを毎日いたぶり続ける。
『つまらないな、こいつ』
『ああ、あんなに悲鳴を上げてたくせに反応しなくなってきたよな』
「…」
『おい、いつまで黙ってるんだ。ああ…それとももっと地獄へ堕ちたいのか。ならばくれてやろう、火がいいか?それとも水か?特別に選ばせてやる』
「…」
『とんだ貪欲さだ。いいぞ、望み通り両方くれてやる』
『じゃあ俺は火を』
蝋燭の火を傷に当てられる。
「っぐ…ぐあああっ!」
『喉が渇いただろう?水を口に入れてやる。ああ…だが呑み込むなよ?目一杯溺れるんだ。』
口にホースを入れられる。
「…ぐっ…が……ごっ………」
アタシは意識を失ってしまった。
『チッ、反応しなくなった』
『飽きたな…これだから半端者は嫌いなんだ』
『仕方ない。また傷がふさがるまでこのままにしておこう。始祖は寛大だからな』
……