禁断の果実ができるまで
□第1話 遠い昔
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それは、新しきイブの林檎計画が動き出すより遠い昔の話。
アタシは父カールハインツと母コーデリアの一人娘、つまり逆巻家の長女として逆巻城で過ごしていた。
「母様」
冷たい床。ソファに座る一人の女。アタシは使い魔の伝言を聞いて、その後直ぐに静かに話しかけた。
「あら居たの、シュリー。邪魔よ。退きなさい」
冷たい瞳。いつものことだ。いつもなのに、慣れない。
それでも精一杯の作り笑いを浮かべる。
「でも…」
ちら、と見て母は視線を男へと戻した。
「アタシがアンタに構う訳ないじゃない。第一跡継ぎになれない女なんて要らないのよ、目障りだわ。ねえ、リヒター?この虫けらを追い出してちょうだい」
「ええ」
おもむろに頭を掴んだかと思えばそのままベランダへと連れ出す。
「っ叔父様!痛いっ!!」
床につかない脚をばたつかせる。
頭蓋骨が軋む。脳が悲鳴を上げそうなくらいの力に偽ることができない。
「黙れ、母の言うことくらい聞けないのか?」
「…っ!」
「大人しくしていろ。そうすれば草の上に落としてやる」
ここは二階。そして今、2人はベランダの縁ぎりぎり。
「…ふん」
刹那、
目の前が黒く染め上げられた。