Bloody Eclipse


□第36話 黒髪の少女
1ページ/1ページ


どれくらい眠ったのだろうか。

目を開くとうっすらと見える真っ青な、空。

アタシ…確かシンにボッコボコにされたんだっけ。


あれ?


アタシが月浪のアイツらにやられたのは逆巻家の屋敷だったはず…

そう疑問に思って辺りを見回せば、中世ヨーロッパの町並みが目の前に広がる小高い丘の上に居ることを知った。

見たこと無い場所だし魔界なんかでもないし…てことは、

やっと死んだんかなあ…

なんて思うけど。

あんなんで死ぬはずがない身体なんだ、有り得ない。

それにもし仮に死んだというのなら、もうとっくの昔に死んでるはずだ。

要はここまで生きたという事が、アタシが今まだ生きていることを証明してしまっている。



いや、それどころではない…。

すぐそこに人間がいる。

人間は面倒だと思いつつアタシは姿を確認すべく振り返った。

枯れかけた大木の根元。

そこにいたのは、痣だらけで仰向けに倒れ込んだ細身の少年。

「っ…痛…っ、…また僕は守れなかったのか…っ!くそっ」

痛みをこらえながらも悔しそうに拳を握りしめた。

「お兄様…っ!」

え…?

「ごめん、守れなかった…」

そう言って少年が抱き締めた黒髪ロングヘアの少女。

この人間に、魔族であるアタシが気付かなかった…?

「お兄様、私は平気だから…自分を責めないで」

「平気なんかじゃないだろっ…なんで父さんは…うっ…」

「お兄様っ!」

「心配するな…」

「でもっ!」

「ああ、きれいな空だ…見てごらん。青空はいつだって、平等だ。誰から見ても、必ず、青空は青空だ。」

「っ…」

「だから、青空には人を幸せにする力がある。どんなに苦しくても、辛くても、また立ち向かえる力になる。」

「お前に辛い思いをさせたくないんだ。お前が幸せなら僕も幸せなんだ…だから、必ず父さんを説得するから…」



「アレン、遅いぞ」



「っ!!」

「…いい加減身分を考えなさい。」

「でも…っ」

「黙れ!」

「分かるだろう、お前は政治家一家の一人息子。奴隷と親しくなってはならない。表向きは妹だとしてもな」

「っ…」

「お前もお前だ。必要以上話すようならその口を封じてやる。いいな」

「っ…はい………」

「来い、アレン。」

「……っ!」

「おい、メイド」

「はい」

「時間になったら連れてこい」

「はい」

「――、お前もそれまでに着飾れ」

「…はい」

は…?

「まあいい…行くぞ」

そう言ってアレンは男に連れて行かれた。

ていうか、名前……

今、確実に











シュリー









って呼んだ…
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ