Bloody Eclipse


□第19話 選択の余地もない
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「さあ、選択しなさい。勿論、我々始祖のもとへ来るわよね?それに、来ないなら…分かっているでしょう?」

行かなくても誰かしら傷つくし、ついて行ったところで帰ってこれる保証はない。

それでも、彼が、彼らが傷つかないのなら。

「ユイっ、行くな!」

「っ…」

彼の声が脳まで響く。




どうして私、迷ってるの?

二度と会えないかもしれないから?

そんなはず、ないはずなのに。




「どうしたのかしら…もしかして迷っているの?」

「っ」

「…馬鹿ね」

剣が鞘から抜かれた。

「ユイっ!!危ないっ!!」

振り下ろされる剣の目の前。

咄嗟に飛び出る、彼の影。






ザシュッ────────!!







「いっ…た…」



生肉の切れる音が鈍く響いた。

ポタリ、ポタリと落ちる重く赤黒い雫。

でもそれは、彼のではなく───



「っ…シュリーさん!!」

彼女のだった。




「ごめん、姉様…」

「シュリー…貴女、気が狂ったのかしら?」

屈み込むシュリーさんをアルマさんはただ見下ろす。

「っ元から、ね…姉様は気付いてなかったみたいだけど…」

それを見上げる、シュリーさん。

「だけど…小鳥ちゃんをアンタら始祖にあげるのも、弟たちから小鳥ちゃんを引き離すのも嫌だなあって思っちゃって…ほんっと、アタシって馬鹿…笑っちゃう。

…カールハインツは相変わらず憎いのに」

「シュリーさんっ、血が…っ!!」

斬られた肩から大量に流れ落ちて血だまりが出来ている。

「だいじょーぶ、アタシは痛いの慣れてるし、最初から傷つくのは確定してる。さっきだって実は殴られたり蹴られたりとかしてきてんだから」

にこりと、いつもの笑顔で笑う。

「でもっ…!!」

「ていうか…これもアイツの計画を上手くいかせないための邪魔のつもりなんだけどね。幸いアンタはアダムを選ばないままで済んでるし。」

「っ…」



「…バレちゃったから言うけど、姉様、アンタら始祖の繁栄に手を貸す気は毛頭ないから。」



「罠はヴァンパイアどもに仕掛けたのではなく、実はわたくしたちに仕掛けたもの…まあ、予想範囲内ってところね。仕方ないわ、妹に免じて此処まで目をつむっていたのだけど…

やるわよ、シン」

剣についた血を振り払うアルマさん。

「やっと楽しめそうだゼ!サンキュ、姉さん」

シンくんは拳を鳴らしてにやりと笑う。

「カルラも、いくわよ」

「ああ、準備は出来ている」

カルラさんも、雰囲気ががらりと変わった。

3人のその殺気が重なったそのとき。






「奪わせない…っ!!」

みんなの前に立ち、自分の背後に魔術でバリケードをつくる。

「シュリーさん!!」

「姉さん!!」

「だいじょう、ぶ…これは、アタシの、罰…だから…っ」

何故か、シュリーさんは自分を覆わないけど。

そんなこと、すぐに考えられなくなった。

「馬鹿な奴だ。これくらいで防げると思うな

女、来いっ!!!」

腕を乱暴に引っ張られ、引きずり出される。

「っ!いや…っ!!」

身をよじってもびくともしない。

「っ小鳥ちゃん!!」

「ユイ!!!」

「いくらシュリー、アンタでも気抜いたらやられちゃうよ!ほらっ!!」

脇腹を強く殴られ、崩れ落ちる。

「っ!!ぐあっ…!!!」

「シュリーさん!!」

「またアンタに地獄を味わせてやるよっ!!」

「っぐ…!!かはっ…!!!」

「シュリー!!っくそ、」




「アルマ」

私はそんな光景の中何も出来ずにカルラさんに捕まっている。

何をしても、本当にびくともしない。

「ありがとう、カルラ。これで取り敢えず目的は叶うわね。

さあ行きましょう、小森ユイ」

「いやっ…!」

「仕方ないわね、寝てなさい」

「っ…!!」

そこで私は気を失った。




「はあ…これだけわたくしを手こずらせるなんて…疲れたわ」

「そう言ってるだけで足りないくらいなんでしょ?姉さんはさ」

「シン、さっさと片付けなさい」

「えーっ!少しくらい楽しんだっていいじゃん」

「すぐ片付けないならナッツ没収するわよ」

「それは困るよ!チッ…仕方ないなぁ…」

「いいから早くしなさい。

…それにしても本当に、」






─────────馬鹿な妹ね





 

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