椿に嫁入り

□七輪咲いた
1ページ/4ページ

夫婦になるかどうかは一旦置いておき、
自分の身を置く場所を見極めるまで椿花ヶ枝屋敷で暮らすことになった京治は、
与えられた部屋で庭を眺めて過ごすことが多かった。

椿花ヶ枝屋敷で暮らし始めて七日が経った。

ずっと同じ牢の中で生きてきた京治にとって、
外の世界は憧れと共に恐怖も感じるところであった。

だが、必要最低限しか出てこず、厠に行くのもびくびく怯えている京治を見ても、
峡はあえて連れ出そうとはしなかった。


その代わり、仕事の合間に京治の部屋を訪れては様々な話をしてやったり、読み書きを教えて様々な書物を与えた。

呪術の勉強の為、海外で暮らしたこともある峡の知識は凄まじく膨大で面白く、
京治は峡が話す外のお話を夢中になって聞いた。

そのうちに、京治は疑問に思った事を峡に質問するようになり、
少しずつ、恐る恐るだが部屋から出てくるようになった。

そして今日、峡は二つある仕事部屋のうち裏庭に通じる縁側のある部屋に京治を呼んだ。

『俺は領主の光尹様に仕える呪術師だが、実はこっそり裏稼業もやっているんだ。
京治、お前も手伝ってみる気はないか?』


「うら、かぎょう?ですか?」

京治にとっては初めて聞く言葉だ。

『ああ、主にやってる仕事とは別にやってる仕事のことだよ。』

「おしごと・・・」

京治は困惑した。
今まで仕事というものをやったことがないし、どうやって働くのかもよくわかっていないのだ。

『なぁに、今回のはそう難しいものではない。事前に依頼内容は聞いているからね。
しかも、俺たちにしかできない仕事だ。意味、わかるかい?』

京治は少し考えこんだが、ようやく理解した。

「妖物に関わるお仕事なのですね?」

峡は満足そうに笑うと京治の頭を撫でて言った。

『よくわかったな。本当に賢くて、いい子だ。
どうだ?手伝ってくれるか?』
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ