Novel 3

□『漆黒王と竜の宝剣』
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「ブルマさん、こんにちは〜っ!」


ラディッツは、外からガラス越しにこの店の主人である人物を確認してから木戸を開けた。




自分の半分位ある背負い籠を勘定台で何やら編み物をしているブルマに気にする事無く床に置いた。




「ラディ今週はどう?」


ブルマはラディッツには目もくれず編み物の手は止めずに話し掛けた。


「う〜ん、イマイチかな。採れる種類が段々少なくなってきているから」


ラディッツは籠の中を見て半分位しか無い草や実を見て溜息を吐きながら小さな椅子を引き寄せて座った。




「編みぐるみ、今度は何作っているの?」


ラディッツはブルマの止まらない指先を見て小首を傾げた。


「ん〜、カエルだよ」



編み物はブルマの趣味で店の仕事が一段落して暇を持て余している時に膝掛けや肩掛け、靴下や帽子まで編んでしまう。


「へぇ、張り出し窓のは犬と熊と猫と・・・・蛇?」


「竜だよっ!蛇には角は無いし髭もあるだろぉが」




クスクス笑いながらラディッツは張り出し窓まで行ってブルマが竜だと言い張る編みぐるみを持ち上げた。


「あっ、手足もあった。そうだと思ったんだけどさ〜」



「出来たっ!ほら、ラディッツこのカエルあげるよ。簡単だったけど可愛いだろ?」


「うん。ありがとう、ブルマさん」


素直にラディッツはブルマにお礼を言って受け取った。


「作り方はこの前教えた編み方と同じだよ。耳だったのを目に見立てて、ちょっと丸く作ればカエルだろ?」


「うん。立派にカエルに見えるよ。竜はちょっと頂けないけど」


「ったく。ラディッツも言うようになったよねぇ。やってみる?」


「ううん、出てくる時間も遅かったし今日はいいや」




ラディッツが編みぐるみをするかしないかどうでもいいブルマは漸くチラッと横目で籠の中を見る。



「今の時期、それだけ採れれば凄いよ。頑張ったんだね」



ブルマはラディッツが森で採ってきた上質の薬草や薬実を見ながら王都での売り上げを頭の中で計算しつつラディッツに微笑んだ。



ラディッツはブルマの思惑には気が付かず純粋に褒められたと微笑み返す。


薬草の言い値の金額からブルマの店で買った塩や小麦粉や石鹸等を差し引いた金額を受け取った。




「んじゃ、来週また・・・」


来るね、とそう言いかけるとブルマが「あっ、そうだ!」と思い出して大きな声を上げた。


その声を聴いてラディッツが眼を大きく見開き2,3回瞬きする。


「び、ビックリしたなぁ〜いきなり大きな声出して」

ラディッツの小さな抗議に悪びれないブルマは大きな碧い眼を細めた。


「ラディに伝言があったんだ」


「へぇ・・・・そう?」


自分に伝言なんてする人なんて街にいるのだろうか?。


ラディッツはブルマの言葉を聞いて眉根を寄せた。


「帰る前にお館様の屋敷に寄ってくれってさ」


「・・・分かった(お館様って辺境の伯爵様だ)」




不安だか期待だか目を泳がせているラディッツの背負い籠の中にブルマは数日分のパンを入れてあげた。


「確かに言ったからね。必ず行くんだぞ。じゃなきゃ怒られるのはこっちなんだからな」


「ん、じゃぁ行くね。いつもありがとう。これも」


ラディッツはよいしょと背中の籠を背負い、薬草を買い取りしてくれたのとカエルの編みぐるみとおまけにくれたパンのお礼を言って店を出た。


ラディッツが出て行って暫くしてブルマの店の中に一人の男が入ってきた。


勘定台の横にある机の上にある薬草や実を見て「ラディ?」と聞いた。


「あぁ。量はあまり無いけど質はいつも通りいい感じ」


「やっぱりそうか。ロバの荷馬車だったからラディッツかと思ったんだ。で、今回は?」


一瞬キラリと眼を光らせ伴侶であるブルマを見つめた。


「いつも通りの値で買い取ったよ」


「ったくラディに悪ぃって思わないのかねぇ?」


「いい子だし友達とは思ってるよ。だけどさ、まぁこれも商売だからね。ラディも分かってるさ。ま、せめてものお詫びにパンとか、編み物の小物とか・・ね。・・・明日、王都まで荷馬車を頼むよ。」


「あぁ」といったブルマの伴侶のヤムチャは薬草を丁寧に大きな布に包んだ。




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