Novel
□『その言葉が聞きたくて−帰る場所−』
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スカウターで通信したらまだ話し中だ。
俺は眉間に皺を寄せ外に飛び出した。
多分この時間だと学校も終わり買い物かもしれない。
いつも利用する商店街に行ってみた。
商店街の入り口にある顔馴染みのタバコ屋の親父にラディッツを見たか聞いてみたが、ここ数日は見てないとの事だ。
何処にいるのか解らない息子に段々イライラしてきた。
もしかして早く会いたいなんて思っているのは俺だけだったのか?
俺の事なんか忘れて友達とスカウターで話していたのかもしれない。
別にすぐにでも俺に会いたいなんて思ってないなら探す事も無いのかもしれない。
再度ラディッツに連絡してみてスカウターに出なかったら家に帰ろうとスイッチを押した。
「ラディ・・・てめぇ何処にいるっ?」
ラディッツに繋がって本当は嬉しいのに優しく声を掛けたいのに、凄んで低い声で怒鳴ってしまった。
第一声がこんな声だと引っ込みもつかなくなってしまう。
「お・・・とうさん?」
怒ったように聞こえたであろう俺の声にラディッツも怯えたように戸惑うのも解る。
しかし気持ちに余裕が無くなっている俺はラディッツを気遣う事も出来ない。
「何処にいるってんだよっ!」
「・・・・」
「ああ〜そうかよっ!解った!」
「え?」
弱々しいラディッツの声に、多分友達と遊んでいると俺は確信した。
「俺なんか帰っても帰らなくてもお前には関係ねぇみたいだな」
「おと・・」
「もういいっ!」
ラディッツの言い訳なんか聞きたくなかった俺はスイッチを切った。
子供よりも子供じみた態度に、自分自身嫌気がさす。
こんな時は酒だ。
日がまだ高いうちから酒が飲めるのは大人の特権だ。
ガキにゃ無理だろ。と、自分は大人なんだと自己認識させた。
踵を返し商店街にある24時間営業の居酒屋に行く事にした。
飛行禁止のアーケードの中をズンズン歩くと結構混雑している人の波が俺の前で綺麗に分かれていく。
自分でも分かる。
多分俺はあたりかまわず殺人でも起こしそうな目をしているに違いない。
そんな俺にぶつかりでもして関わるのが嫌なのであろう。
目的の店の看板が見えてきた。
「ラディッツのお父さん?」
後ろから甲高い声に呼び止められた。
振り向くとラディッツと同じ年頃の浅黒い肌のサイヤ人のガキだった。
「あ?」
「帰って来たの?良かったぁ。あれ?ラディは?」
「知らねぇな。ダチと遊んでんだろ」
もう話は終わりだとばかりに店のドアに手を掛けようとしたら
「そんな筈無いと・・・」
「は?」
買い物もしていない、友達とも遊んでいない・・じゃぁ何で家にいないんだ?
「さっきまで俺とスカウターで話していたから・・」
「ふん、そうかよ。俺には関係ねぇだろ」
「そんな・・・。ラディはお父さんの事が心配で心配で学校の給食も全部食べられなくて残しちゃってたのに・・・」
「え?」
「ずっと元気無くて・・・お父・・おじさんの話すると泣いちゃうからどうしたらいいかって思ってて・・・」
「・・・」
「さっきもスカウターで話ししたら今日も夜まで待ってみるって言ってたし・・」
「待ってみる?」
「うん。今日は学校休んじゃったんだよ。あっでも帰って来てるって知ったんだったらもういないかもね」
「どこだ?」
「え?」
「ラディッツは何処で待っているって言ってたんだ?」