Novel

□『ラディのお買い物』
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シャワーを済ませてソファにドカッと座ったのとラディッツが帰ってきたのとほぼ同時だった。


「親父、帰ってたのか?」


お帰り〜と、大量の食材をキッチンのテーブルに置く能天気なラディッツに無言のバーダック。

ラディッツはバーダックが無言で機嫌が悪そうなのは 遠征先で面白くないことがあったかザーボン様にまた嫌味を言われたか腹が減っているのかな位に思っていて、こういう時は下手に刺激をしないに限るといつもの事に気にしたそぶりも何もない。


すぐ飯作るから〜と タオルで頭をガシガシと拭いているバーダックの背中に声を掛ける。


「酒だ」と一言バーダックが言うも、ラディッツは既に酒の用意をしていてテーブルに持っていく。


酒をグラスに注いであげてから「今、つまみ持ってくるから」とキッチンへ戻るラディッツ。


さっき惣菜屋で貰った試作のものと他に2、3種類のつまみを素早く用意をしていると

「肉か?」とおもむろに聞いてきた。


主語と述語があまり無いバーダックにも慣れっこで夕飯の事だと思ったので、スキヤキだよと返す。



「そこの肉屋のは美味いのか?」


「うん。美味い…よ。ほら、この前のザブトンメンチもそこのだったんだよ。親父20個位食べたっけ。」



なんか引っかかる。


いつもなら自分が何処で何を買おうがまったく気にした事も無いのに。


それに帰り際、タバコ屋の爺さんは親父さんに会わなかったのか?なんて聞いてくるし…。


まさか…でも…この機嫌の悪さは……………


「人気があるようだな」


そんな事言うなんて、その場にいないと分からないだろう。


自分とターレスが話しているのを親父が見ていた? 


未だ苦虫を潰したようなバーダックの様子だがラディッツの心の中に何か温かいモノが流れてくる。


これは親父の勘違いを治してあげないとな〜と、この俺様の機嫌を損ねると後でどんな事をされるのか容易に想像がついてしまうラディッツは、勘弁してくれと思うのと同時に期待もしてしまっている自分がいて勝手に一人頬を染めてしまった。



声が上擦らないように一呼吸おいてから

「昔から肉はいつもそこで買ってたよ。去年から同級生だったターレスが肉屋に居候して遠征が無い時は店を手伝っているんだ。」


「・・・・・・」


「ターレスって女の人に凄くモテるんだよ!女の客が増えて店の売り上げが倍以上になったっておじさん喜んでるんだ」

と、背中のバーダックに話掛ける。


さらに


「ターレスの彼女も気が気じゃないんじゃないかな?でもあの二人はいつもラブラブだからな〜」

と、ラディッツも肉屋の話はそこそこに身の潔白になる話をして聞かせる。


「ふん」と聞いているのかいないのか、しかし横顔のバーダックの口角が上がっているのをラディッツは見逃さない。


つまみの皿を持っていきながら


「親父、妬いちゃった?」クスクスとラディッツが近寄る。


「あ”?」と眉を顰め片方の眉尻を上げるバーダック。


皿を置きながら身を屈め頬にチュッとキスをする。


「俺は親父だけだからね」と立ち去ろうとするラディッツと目が合った


花が綻ぶような笑顔を向けられ、一瞬目を見開いたバーダックはラディッツの手首を掴み自分の方へ引き寄せ抱きしめようとした。


が、蝶を捕まえようとしても、ふわりとかわされ捕まえられない様にラディッツもするりと身を翻しキッチンへ行ってしまった。


「このヤロウ」とチッと舌打ちし、後で覚えておけよとグラスの酒を一気に飲み干した。




End





→あとがき




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