Novel 2

□『 ブラックトマトは甘い毒 』
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「ふぁ・・・っ!あっ!あっ!ぁあッ!んああぁぁ〜っ!」



遅い変声期を迎えて自分の低い声に慣れて来た頃だったのに、自分の発する高い声に違和感を覚える。

まるで子供に戻ってしまった様で恥ずかしい気持ちになってしまう。

強請る様で媚が含まれるような甘い声は自分から漏れ出ているのであろうか?

でも触れあう肌の温度が心地よくて溶けだした身体に酔いしれていった。




*************





『あれっ?トーマさん、明後日じゃないの?』


『ははっ、さっきメディカルマシーンから出た所だ』


『珍しいね。トーマさんが怪我するって』


『言うな、ラディッツ。これでも落ち込んでるんだぜ』




遠征に行っていたトーマさんが一人で帰還した。



激しい戦闘だったみたいでテンションが上がってしまったトーマさんは、独り前に出過ぎて持ち場を離れた為、敵の標的にされてしまったらしい。


敵がトーマさんに集中した為に瀕死の怪我を負ったが、機転を効かした親父達が外堀から攻め込み勝利したそうだ。


戦闘の後処理と惑星の情報をデータ化して軍に送るのは、軍から派遣された兵士達の仕事だけれども、数時間から長くて2,3日掛かるそれが終わる迄は帰る事は出来ないのだ。


例外はメディカルマシーンにお世話になる程の怪我を追ってしまった場合は先に帰されてしまう。


給料査定にも響くが本人にしてみればこれほど不名誉なことは無く恥ずかしい事なのだ。



『でも、これで戦闘力もあがったんじゃない?』


『ふん、そんな事が無けりゃ死んだ方がマシだっつーの』 


『あはは,親父とは考え方がちょっと違うね』


『あんな戦闘馬鹿に付き合ってられるかっ!』
 

『良く言うよ。トーマさんだって相当じゃない!』



『あっ!そうそう。バーダックから預かりモンがあるから、これから俺んち来れるか?』


『親父から?』


『おう。前にどっかの惑星で取ってきたフルーツを土産にお前に食べさせたら喜んでいたからって、さ』


『えぇっ!?あれあったんだ!!もう食べれないと思ってた!凄い!』



『一時間もしたら家に帰れるから何時でも来いよ?』



『うん、分かった。後で行くよ』



スカウターでの通信を切った俺は、フルーツの事で頭がいっぱいになった。


親父が遠征に行った惑星にあったそれは甘くて瑞々しくて美味しくて、あっという間に食べてしまった。


その味が忘れられなくて市場や輸入食材を扱う店とかスーパーやデパート、ネット通販で調べたけど全然無くて、もう一度食べたいと親父に駄々を捏ねたりしていた。


遠征に行く度にフルーツがあったら持って帰ってきてとしつこく強請っていて、帰って来る度にそれが無いと泣いて拗ねていたら、いい加減にしろと怒られていたものだ。




「ほら、これだろ」


「わぁ〜っ!これこれ!トーマさん!キッチン借りていい?」


「お〜いいぜ」


「皮むくから一緒に食べよ?」


「う・・・・ん」


「え?・・・・なに?う〜んって・・・先に一個食べていい?」


「お〜いいぞ。っつーか、それ、俺には甘すぎなんだよなぁ」


「親父もあんまり好きじゃないみたい。だから持って帰ってくれなかったんだと思ってたんだ。でも覚えててくれたんだなぁ」



皮を剥きながら「嬉しい」と小声で一言言ったラディッツのほんのりと赤くなっている頬を見たら胸がモヤモヤとしてきた。


ラディッツの顔を笑顔にさせているのが俺じゃなくてバーダックだって思ったら何となく面白くない。


持ってきたのは俺なのに!




「ん〜っ!(モグモグ)おいひ〜っ!(モグモグ)ん〜っ!」


「美味しいか?」


「うんっ!美味しーよっ!トーマさん、どう?」


「んじゃ、一口貰うかな」



キッチンシンクにいるラディッツの所まで行った。



そして一口大に切り分けたフルーツを盛った皿をラディッツは俺に差し出した。


「・・・・どう?美味しいでしょ?」


「まぁ・・・悪くないな」


「え〜!何それ?美味しいでしょ〜に。もっとどうぞ」


「いや、もう十分だ。」


「じゃ、これ食べちゃっていい?」


「ああ、俺は他のモノがいい」


「帰って来たばかりで何かあるの?買い物行く?」




ラディッツは皿にあったフルーツをそれは美味しそうに全部食べてしまった。





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