Novel

□『 unhappy father's day 』
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〔side Raditz〕




いつもよりちょっとだけ良いお肉でビーフシチューを作る。

隠し味にお父さんの秘蔵の赤ワインをチョット失敬して。

お酒のおつまみも乾き物だけじゃないし、手作りの物もいつもよりちょっとだけ、ホンのちょっとだけ凝ったものだ。

だし巻き卵は自分好みに甘くなっちゃったけど、いつもは無い大根おろしが添えてある大丈夫かな。

冷やしトマトもトマトだけじゃなくてタコとキュウリと一緒にカルパッチョに。

お父さんは茄子やチーズも好きだからグラタンにしてみた。

お酒も発泡酒じゃなくて生ビールだよ。

冷蔵庫の温度を少し下げて冷やしているしジョッキは冷凍庫の中だ。

一気飲みした後の「かーっ!うめっ」って、良く分からないけど美味しそうに飲むから、僕も何故だか嬉しくなっちゃう。

ケーキも頑張ってフルーツがいっぱい入ったシフォンケーキを作った。







数日前、学校の天文学の授業で『太陽系の惑星の黄道塵の中の視線速度』の説明から脱線して「チキュウ」という星のイベントについて先生が話していた。


この先生の雑学は下らないモノから感心するモノまで色々あって、実はこの雑学タイムが何気に好きだったりする。




「父の日かぁ」・・・初めて聞く話だけどサイヤ人の生徒は興味持って無く、皆はあからさまに机に突っ伏していた。


でも話の中で、母の日や父の日のイベント話に興味を持ってしまった。


「親に感謝をする日」って言って、先生はサイヤ人には関係ないけどなぁなんて前置きをして話し始めた。


親と一緒に住んでいる異星人の生徒達は素直に耳を傾けている。


サイヤ人にしては珍しくお父さんと一緒に住んでいる僕は、どうやってお父さんに感謝の気持ちを示すのか分からなかったので授業が終わってから先生に聞いてみた。




「自分の出来る範囲ですれば、喜んでくれると思うよ。まぁプレゼントなんか無くても育てて貰ってる親に言葉にしてありがとうって言えばいいんだよ。それだけで親は嬉しいもんさ」と頭をポンポンと撫でてくれた。


先生と別れてからチョット言葉に出して呟いてみたけど面と向かって「お父さんありがとう」って何となく気恥ずかしくって言えるとは思えない。


お父さんも言葉だけで喜んでくれるかどうか分からないし。






僕の出来る事といったら・・・。







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