Novel
□『 ロマンチック無限大 』 ★
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何もかもが面白くない。
クラスメイト達が最近流行りの一発ギャグをしていてはしゃいでいるのを見ていても
量り売りのキャンディーをおまけで多めに入れてくれても
隣の家で飼っている犬の頭を撫でても気分は晴れない。
原因は分っている。
親父だ。
この頃親父の一挙一動を見たり、俺を呼ぶ声にイライラとする。
服は脱ぎっぱなし、ドアは開けっぱなし、電気は点けっぱなし、綺麗にするのは皿の上の料理だけ。
それらに加えてだ。
自分の事なんだから自分で動けばいいのに何かに付けて俺を呼びつける。
ビールのお代りや新聞持って来い、だのはまだ解る。
風呂あがったらバスタオルや着替えがいるんだから準備してから入ればいいのに何故しない?
挙句の果てには、しつこく俺を呼ぶから大事な話だと思ったら「今何時だ?」なんて聞いてきた。
ちょっと首を90度位捻れば置時計があるのにさ。
もう信じられない!年々酷くなってきてるよ。
今まで下級戦士の中の一番のヒーローだと思っていたのにさ。
クラスメイトが何処から聞いてきたのか、遠征に行った親父達の武勇伝とかを羨望の眼差しで俺に確認するように話してくる度に鼻が高くなって、流石俺の親父だって・・・
自慢の親父だったんだ。
でも蓋を開ければものぐさで、だらしの無い只のオッサンだ。
ほら今だってズボンに手ぇ突っ込んでケツ掻きながらトイレに入ったよ。
しまいには、代わりにトイレに行ってくれなんて言い出すんじゃないだろうか?
全く溜息しか出ない。
今のうちに早くお皿洗って自分の部屋に行こう。
「お〜、ラディ。もう部屋に行くのか?」
「・・・・・」
「・・・・・?」
無視だ無視。
俺が何処に行こうが何をしようが親父には関係ないだろっ!
いちいち五月蠅いんだよ。
俺だっていつまでも小学生のガキじゃないんだ。
親父の視線が背中に突き刺さったけど、足早に二階へ上がってしまった。
宿題があるから学校のテキストを広げて一応は机に向かう。
でも全然頭に入っていかなくて、同じ一行を何回も読み返す。
頬杖ついて、指先でペンを回していると突然部屋のドアが開いた。
「ラディッ!何してんだ?」
「なっッ!親父!急に入ってくんなよ!」
「ふんッ、いつもの事じゃないか」
「ノック位しろよっ!バカ親父!」
「あ〜悪りぃ。・・・今からオナろうとしてたのか?」
「はっ?ばッ!バッカじゃないのっ?も〜っ出て行ってよ!」
クソ親父!何て事を言い出すんだ!
俺は親父を部屋に入れさせない様に飛びかかるように体当たりして、グイグイと親父の身体を押した。
「な、おいっ!「何だよ?イチャイチャしようぜ?」
「し、しないよっ!するわけないじゃんっ!俺は忙しいんだよっ!」
「ボ〜ッとしてただけじゃねぇか、入れろよ」
「ダメだったら!こ、これから宿題するのっ!もうっ早く出ていってよ!」
「チッ、わぁ〜ったよ。っせぇガキだなぁ」
ドアを閉めて親父が部屋へ入るのを阻止成功した俺は、ドアに背中を付けてズルズルとしゃがみこんだ。
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