Novel
□『 違いがわかる男 』
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「あんたって馬鹿?」
目の前にいる異星人の女が顔を歪ませながら隣にいるラディッツに言った。
ラディッツは何て言っていいのか分らない様で俺の顔を不安そうに見ている。
「おい、コイツにそんなこと言うと許さねぇぞ」
「だって言われなきゃ分らないから言ってるのに、全然理解できて無いみたいじゃない?だから馬鹿だって言ったのよ!馬鹿に馬鹿って言って何処が悪いのよ?」
「止めろ」
俺とラディッツは昼食を取りに家の近くのレストランに来ていた。
機嫌良くハンバーグに食らいついていたラディッツは女の登場でナイフとフォークを置いてしまった。
まだラディッツが赤ん坊の時に数か月関係が続いた女の異星人だった。
甲斐甲斐しく世話を焼くのを最初のうちは満更でもないと思っていたが、段々俺を束縛するようになって、男女問わず俺が誰かと話しているだけで嫉妬するようになり、何も無いと言っても信用せずに泣き喚き物を壊した。
いつの日か家に来た時、俺が眼を離している隙に昼寝をしているラディッツの首を絞めているのを見て俺はキレた。
しかし女を見ると眼の焦点が合っておらず、狂った女を家から追い出し関係を切った。
今考えると、何故あの時に殺しておかなかったのかと後悔した。
女は自分の星に帰ったと風の噂で聞いた。いつ、何故、この星にまた来たのだろうか?
「だーかーら!あんたなんかより私の方がバーダックを幸せに出来るの!解ったら早く家から出て行ってよっ!学校の寮でも何でもいいからさっ」
「いい加減にしろ!」
俺がそう言うや否や女はテーブルの皿を全部下に落とした。
皿の割れる音が響き、ざわついた店内は一瞬静まり返ったが、すぐに音が戻ってきた。
店員がすっ飛んできて、床に落ちた割れた皿とまだ食べていなかった料理を片付け出した。
そして俺と女に向かって他のお客様に迷惑が掛かるので・・・と言い難そうに去っていった。
ラディッツは眼を丸くして金縛りにあったように固まっていた。
「バーダック!私と一緒にいてよ。また昔みたいに」
もうあれから十数年経っているというのに何故俺に執着しているのだ?
ヒステリーを起こした後は泣き落としか?ったく変わってねぇ女に溜息しか出ねぇ。
しかし不毛な話をラディッツには聞かせたくない。
俺はラディッツに食べそこなった飯を作ってくれと金を渡して家に帰るように言った。
「カレーでいい?」
俺は頷き、不安になって目を潤ませて聞いてきたラディッツの額に女に見せつけるようにキスをした。
ラディッツが店を出て、商店街の方へ飛んで行った。
すると女が自分の家に来てくれてと訴えてきた。
店とか外とかで話していて女がヒステリーを起こして何かを壊して弁償する羽目になったら割に合わないと思った俺は女の家に行こうと思った。
そして今度こそ終わりにしようと心に決め、最悪殺してもいいとさえ思っていた。
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