Novel
□『 戦士達の休息 』
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年末年始、仕事は休みだ。
王族や上級戦士はリゾート星に行ってしまう。
異星人は自分の星に帰省したりする者も少なくない。
下級戦士のサイヤ人と言えば戦闘が3度の飯よりも好きなのに2週間も休みっていうのは、生殺しに等しい。
下級戦士の一部は、手頃な温泉とか近場の星に行く奴らもいるらしいがそんな事もかったるい。
トレーニングしていても集中力が続かず切り上げるのが早い。
まぁ内勤するんだったら休んでいた方がまだマシだけど、暇を持て余してしまう。
と、数年前までは思っていた。
今はそう、ラディッツがいる。
3歳のラディッツの相手をしていると一日が早い。
戦闘力が低いせいか大人しくて赤ん坊の時から手を煩わされる事は余りなかった。
しかし極度の人見知りなのか恥ずかしがり屋なのか、初めて会う人や初めての場所に行くと固まる習性があるらしく、俺と二人きりになるまで、もしくは家に帰って来るまで俺の胸から顔を上げる事は無かった。
ラディッツを連れてフリーザに挨拶に行った時も例には漏れず、怒っても宥めても諭しても顔を上げずに俺にへばりついたので無理矢理引き剥がそうとしたらギャン泣きした。
「強靭な精神を持っているような所はバーダックさんに似ていますね。ホーホッホ」とフリーザに嫌味を言われた。
ったく頑固っつー事だろうが。
回りくどい言い方しやがって。
しかし嫌味を言われただけで良かった。
機嫌が悪くなってラディッツが殺されてたかもしれねぇと思ったら背筋がブルッとした。
俺のチームの奴らにも警戒心丸出しで、奴らが家に来て散々飲み食いして帰る頃になってやっと顔を上げる有様だった。
そんな中、セリパだけには懐くのが早くて、抱っこされそうになって嫌がったのは最初の一回だけだった。
それからはセリパだけには自分から話をしたり遊ぶのをせがんでいた。
セリパも自分だけが特別みたく感じていたのかラディッツの事を可愛がってくれている。
酷い人見知りはラディッツが2歳位になる位迄で、3歳になるとチームの奴等にも慣れ自分の家だと安心して自分から話し掛け遊んで貰おうと愛嬌を振りまいて笑顔も見せるようになった。
そして今年の大晦日の夜はチームの奴らが俺の家に集まって毎年恒例になりつつある忘年会兼新年会だ。
多分正月三が日は皆で呑んだくれだろう。
呑んで食ってまた呑んでを繰り返して楽しむのもそうだが、ラディッツを構いたくて、と言うか何か反応してくれるのが見たくて家に来る時にオモチャや菓子を持ってくるようになった奴ら。
「お〜ラッディ〜!来たぞぉ〜っ」
「ラディ!元気してたかぁ〜?」
だ〜か〜ら〜ドアを開けたとたんにでっかい声でラディッツに話しかけるなといつも言ってるのに学習しねぇ奴らだ
奴らに慣れたと言っても、大きな物音や声に瞬時に金縛りにあったように固まってしまうのは相変わらずだ。
俺の後ろからトコトコとくっついて玄関に来たラディッツは、トテッポとパンブーキンの大声に吃驚して俺の片脚に顔を付けて手を回し縋り付いてしまった。
あ〜もう面倒臭ぇ事になった。
こうなると軽く一時間は俺にべったりと張り付いているだろう。
「てめぇら、っつも言ってんだろぉがっ!」
「いやぁ〜悪りぃ悪りぃ、ゴメンちゃいねぇ〜ラディ?」
「ラディ〜怖くないよぉ。ほ〜ら、オモチャ持ってきたぞぉ」
膝上にガッチリしがみついているので歩きにくい。
しょうがないから少し浮いてリビングまで移動した。
胸に抱き締め直した時にちょっと見えた頬には涙が伝っていた。
何が怖いんだかさっぱり解らないが俺以外に気を許さないで俺から離れない様に離されない様に俺のTシャツを握りしめている小さな手を見ていると優越感に浸ってしまう。
俺は優しくラディッツの背中をポンポンと叩きながら、らしくない声で囁いた。
「ラディ、トテッポのヤローがオモチャ持ってきてくれたってよ」
俺の低音ボイスが効いたのか、オモチャが見てみたくなったのか、でも顔を上げるのが恥ずかしいのか、ラディッツの顔が俺の胸でモゾモゾと動いている。
「この車、タイヤってヤツが付いてるんだぜぇ。カッコいいだろ?」
「何だ?それ、だっせ」
「るせーよ、パンブーキン!ほら、ラディッツ、こうやって走らせるんだ」
タイヤ付きの車に興味が湧いたのか、ラディッツが顔の向きをトテッポに向けた。
しかしラディッツの柔らかい頬は俺の胸にペタリと付けたままで、トテッポがラディと呼ぶ度に顔が埋まる。
それを繰り返す事数回。
トテッポもトテッポで車を持ちながらラディッツの気を引こうとしていて頑張って走らせている。
その頑張りが功を奏したのか、ラディッツが手を伸ばした。
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