Novel

□『その言葉が聞きたくて−帰る場所−』
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「遅い!遅い遅い遅いっ!!ぶっ壊すぞっこのヤロウ!」



気持ちばかりが焦っていても、宇宙船のスピードが上がる事は無い。

窓から見える、流れていく星の残像がラディッツの涙に見える。

一人用ポッドや自分が飛行するよりは断然早いのにトロくさく感じる宇宙船に悪態をついているとトーマやセリパに呆れられた。


惑星ベジータ到着までは、あと2時間もかかる。

あぁ、外に出て後ろから宇宙船を押してやりたい



俺達のチーム5人が遠征に来ていた星も予定通り制圧し、後は帰るだけになってポッドの点検と帰還する為にコンピューターに入力をしていた。

すると何処ぞに潜伏していた敵兵数人が俺達に攻撃を仕掛けてきた。

スカウターにも反応しない生命体だったのか誰も生き残りなどいないと思って油断していた。

まずは全員のスカウターを破壊され、次に全員の一人用ポッドを破壊された。

しかし敵の反撃もそこまでとなり俺達の完全勝利となった。


ホッとしたのも束の間、ラディッツにも連絡出来ないし途方に暮れかけていた矢先、トーマの奴が予備の通信機器を持っていると言ってきた。


出し惜しみしやがって早く言えってんだ。


しかし非常用のもので一回しか通信出来ないらしい。

ラディッツの声を聞きたかったがトーマに咎められ、軍本部に連絡出来た際に五日後に母星に帰還する宇宙船が近くを通るとの事で同乗させてもらう事になった。


予定通りに帰還できない事をラディッツに伝えて貰おうとしたら一方的に切られイライラが募った。ムカつくカエルだ。



そして俺達チーム全員、冒頭の宇宙船の中だ。

心配性な息子は俺が帰ってこない事で不安になって泣いているのかもしれない。


一人で泣いて枕を濡らしているのかもしれないと思うと早く抱き締めて安心して眠りにつけるようにしたい。


一分一秒でも早く会いたいと逸る気持ちとは裏腹に宇宙船はのんびり(と感じる)飛行をしていた。



母星に着いたのはまだ日の高い時間だった。

雲一つない空に俺の気持ちも浮足立つ。


早く家に帰りラディッツの顔を笑顔にしたいと思って、軍上部に報告に行った際、ザーボンの小言や嫌味にもグッと堪え聞き流した。

トーマがよく我慢したなって感心したほどだ。

逆にウケるなんて言いやがって、一言多いのもトーマならではだ。コイツもうぜぇヤツだ。

新しいスカウターを支給され、すぐにラディッツに連絡したら話し中だった。

新しいスカウターだって喜んだのも束の間、割り込み機能も付いていないなんて!

ザーボンの奴、旧型を渡しやがった。後で絶対に殺ってやる。


誰と通信しているんだろうと頭を掠めたが、早く家に帰って直接顔を見て抱き締めるほうが先だと澄んだ青空を気分良く飛行した。



はにかんだ泣き笑いの顔が眼に浮かぶ。


数日の遠征で暫くぶりに家に帰ると恥ずかしいのか少し距離を取っていて、でも名前を呼んで両手を広げると涙を一杯溜めて俺の胸に飛び込んできて頬を胸に摺り寄せてくるんだ。


それで堪らなくなってギュウって抱きしめて、苦しいよって少し怒られてそして笑いながらキスをして・・・

二人の気持ちは離れていても一つだったんだと実感するのだ。


しかし家に着いて中に入るとラディッツはいなかった。
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