もう一度、青春を

□第2話
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幸村side


保健室のベッドで眠っている彼女、東雲 夏蓮ーシノノメ カレンーを見つめながら、俺はさっきの事を思い出す。



部活が始まっても来ないマネージャーの彼女を心配して、レギュラーメンバーで彼女を探しに行った。

マネージャーである彼女をよく思ってない奴ら(ファンクラブの奴ら)が居て、いじめを受けている事は知っていた。

どうにか被害を減らそうと四六時中レギュラーの誰かが彼女のそばにいた。


けれど、そんなことをしたって守れる範囲は限られている。

そうでなくても、彼女は優しい性格で俺たちに心配させまいと隠したりすることがある。

だから、もしものことがあったらと思うと、柄にもなく焦りつつ彼女を探し回った。


焦っているのは俺だけじゃなく、いつも冷静な柳でさえ焦っていた。


それほどまでに俺たちは彼女が大切なんだ。


俺たちに媚を売るわけでもなく、ただ一生懸命に俺たちを支えてくれる彼女が……。


だから、あの状況を見た時、何も考えられなかった。


地面に倒れている夏蓮。そんな彼女に追い討ちをかけるように手を伸ばす女。


触るな。


そう叫ぼうした時、横を赤也が走り抜けた。

あの女を殴るのだろう。

すぐにわかった。わかったけれど、止めはしなかった。止めようとも思わなかった。


案の定、女は赤也に殴られ、ごみ捨て場の壁に背中をぶつけ、その場に座り込んだ。


良い気味。


俺たちの大切な夏蓮を傷付けたんだ。

これで済むのをありがたく思え。



さらに殴ろうと動き出そうとした赤也を柳が止めて、それ以外のメンバーは夏蓮に駆け寄った。

駆け寄って彼女を見てみると気絶しており、頬に叩かれたあとがあった。

服も汚れているし、蹴られたりもされたのかもしれない。


怒りを通り越して殺意がわいた。


そして、その殺意の対象は未だにその場にいた。


さっさと目の前から消えてほしかった。


そうでないと、首を絞めて殺してしまいそうだったから……。


目障りだ、消えろ。


そう言うと、女は立ち上がり、去っていった。


止めるものは誰もいない。


報復ならあとですればいいからだ。


今は……目の前で気を失っている夏蓮が最優先。真田が彼女を横抱きにして保健室に運んだ。





あれから数十分経っているけれど、彼女が目覚める様子はない。



「夏蓮先輩……」



心配そうに見つめ、力なく彼女の名前を呼ぶ赤也。

そんな赤也の頭を撫でる丸井の顔も悔しそうな泣きそうな顔だ。

他の皆も表情が沈んでいる。

まぁ、当たり前だけど。



「…柳。あの女の名前とクラスわかるよね?」

「あぁ、女子であの身長と髪型は特徴的だからな。白津 湊。2ーFだ。」

「どうしてやろうね……」



そう呟くと下から「ん……」と小さく声が聞こえた。

それが夏蓮の声だとすぐにわかった。



「夏蓮!?」



見つめると、ゆっくりと目を開いた。

それと同時に安堵する。

目覚めなかったらどうしようかと思っていたから。



「皆……?」

「!!夏蓮先輩!!」

「わっ!」

「こら!赤也!!」



目が覚めた夏蓮に、嬉しさのあまり赤也が抱き付いた。

それを真田に怒られるのは当たり前だ。

彼女は怪我人なのだから。

彼女は苦笑し、それからキョロキョロと辺りを見渡す。



「どうしたんだい?」

「あの、髪で目元を隠してる女の子は……?」



彼女はあの女の事を探していたみたいだ。



「もう大丈夫だよ」

「あの女は俺がぶん殴っといたっス!」

「…え……なん、で…」



赤也の言葉に彼女は顔を真っ青にし、震えた声でこう言った。



“その女の子は私を助けてくれたのにっ”と

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