マネージャーは、福富さん。

□福富くんのいとこ
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三年生も卒業したあとの春休み。
荒北が部活の終わった頃に
ある疑問をぶつけた。
「なァー、福チャン。どーしてうちのマネージャーは男なんだョ。」
周囲のメンバーは、固まる。
そして無言の空気。
「荒北、毎年マネージャー希望は集まってくる。しかし、みんなが途中で辞めていくんだ。」
「まー、確かにョ。朝はハエーし、人数も多いから雑用多そうだけどョ」
「荒北、こればっかりは、この登れるうえに、トークもきれるこの美形クライマー東堂甚八をもってしてでもだめなのだよ!」
「オメーがいてもムリじゃねーか」
「なんだと!」
「自分でいったんだローが!」
荒北と東堂がいがみ合う。
「しかし、アテはある」
福富が東堂と、荒北に向かって言う。
「福!新入生を待てっていうのか!また、毎年同じことだぞ!
体力も、気力も、器量もいるんだ!結局男子が残るにきまってる!」
「新入生は、そうだろう。
しかし転入生が入ってくるからな。そいつが入ってくれる予定になっている。」
「寿一、誰かあてがあるのかい?」
新開が福富に問うと、福富は、答えた。
「俺のイトコだ!」
「「いとこぉー?」」
「かえってくるのか、椿ちゃん」
「ああ、春休みから参加してもらうつもりだ」
「ってか、もう何日もねーじゃん!春休み!」
「だーーかーーらーー、いま来ましたよ?」
窓の方から女の子の声がする。
開いているまどから、ショートヘアの女の子がくったくのない笑顔で手を振っている。
「つばき…」
「寿一。遅くなってゴメンね?」
「遅い。」
「うん、ごめん。とりあえず、入ってもいいかな?」
福富がああと頷くと、窓にいた女の子は、部室のドアを開けて入ってきた。
スカイブルーのサイクルジャージに身を包み、照れ臭そうにしている。
「椿ちゃん、久しぶり」
「新開くんも、久しぶり」
「フクのイトコか?」
東堂が疑うように聞く。
「フクちゃんに似てねェ」
ぼそっと荒北が呟いたが、福富は聞き逃さなかったようで荒北をみた。
小柄で、瞳も大きいし、まつ毛も長い女の子はどうみても福富のイトコだとは限りなく遠いような気がするが、安心した面もある。
「紹介しよう、イトコの椿だ。
同じ3年だ。」
「福富椿です。
どうぞ、よろしくお願いします」
にこりと微笑んでお辞儀をした。
「新開は、覚えてるな」
「うん」
「よ、おめさんが帰ってきてたとはね」
新開は挨拶がわりにバキュンポーズをした。
「こっちは東堂甚八だ。うちのエースクライマーだ」
「箱根の山神東堂甚八だ!よろしく頼む!」
「こっちが、荒北靖友。オールラウンダーだ。」
「よろしくダヨ」
「みんなエースの箱根学園ね。
出てるレースはみんな見たから
顔も特徴もクセも全部覚えてるよ、寿一」
「そうか」
「戻ってくるのがわかってるから
DVD送ってきてたでしょ」
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