意気地無し少年と自傷少年。

□刃物とお薬使うので。
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視点、鈴鹿。

とりあえずキスをしている、といえば嘘になりそうで、だからと言って計画的にキスをしているというわけでもなさそうだった。
それより。。。

「…はぁ。…ぁ、んんっ。」
気持ちいい。。。
康の舌が絡んできて…本当は、駄目なのに。。。こんな、ことっ。。。

口と口が深く重なり合って響く音と康と僕の荒い息遣いだけが響いた。

「ん、春…樹。。。」
口をやっと離したと思えばまた来る。
息ができない。。。
でも、康とのキスで逝かされるなら、まだマシな気もした。。。
そのうちどんどん体の火照りは消えて。。。











「ご、ごめん。康。。。」
「何で謝んの。。。」
「だ、だって、康、キスするの、初めてなんでしょ…?」
すごく自分で言ってて恥ずかしかった。
「そうだけど、お前もだろ?」
「ぅ、ん。」
「それにお前だったから。。。」
「え?」
どういう。。。
「うるせぇな!なんでもない!」
「あ、そぅ。」

しばらくの沈黙。

それも仕方ない。
そんな事はお互いが知っていた。
でも、少し、ほんの少しだけ、

嬉しかった…かな。

視点、八雲。

今なら…聞ける気がする。。。



よし!


「春樹…昨日、俺…見ちゃって。。。」
「何、を?」
「その。。。」
「ねぇ、康…?」
「カッ、ター。。。なんだ、けど。」
「え?」
一瞬驚いて…俯く。
でもこのまま聞かない訳には。。。
「…ない。」
「え?」
「康には、関係、ないじゃん!」
。。。何だよ、それ。。。
「あ、そう、じゃあこれからお前の顔なんて二度と見ない!」
「…ぇ。ちょっ
「俺には関係ないんだろ?だったらもう縁だって切るから」
「や、やだ!待ってよ!」
そんな風に思ってたならこっちだって。。。

視点、鈴鹿。

「康…康…!」
ごめんなさい、ごめんなさい。
カッターぐらい、人のものじゃないか。。。
康がいなくなったら。。。

ーカチャリ。。。

その指先に触れたものは何年も使ってきた…カッターだった…。
「康、僕。。。」

視点、八雲。

「言い過ぎた。。。」
ったく、カッター1本ぐらいで…喧嘩って。。。
謝ってこようかな。。。
いや、でも、
変なプライドが俺の足を止める。

ーガタッ。。。
「…?」
一階で大きい物音が響いた…。
あれ、そういえば…一階は。。。
「春、樹…?」

一階に近づけば近づく程血生臭い匂いが走る。。。
それと同時に俺の足も早くなっていった…。
ーガチャッ
「春樹ッ!」
「…康…。」
ふらつく体でゆっくり俺の名前を呼んだ。。。
手首、太腿、そして最後に首の血管…
頚動脈に刃を当てて、
走らせた…。
「春樹ッ!!!」
噴き出すのは大量の血、力なく倒れて、抱き締める事しかできない俺…。
頭の中は真っ白だった、
それと同時に















視点、鈴鹿。

「ぅ…。」
何処だ、ここ。。。
あの世でしょうか。。。?
「春樹…?」
すると僕の隣で眠っていた見慣れた顔があった…
「康。」
「春樹…ごめん。。。」
そう言って抱き締めてくれる。
久し振りに嗅いだ匂いだ。。。

「暖かい。。。」

どうやらここは康の部屋らしかった。
「康…もういいって、い、痛い。」
「ごめん、もう少し、もう少しだけ。」
まだクラクラするけど、康が、支えてくれたら。。。
「。。。好き。」
「…俺も。。。」
そんな事言ってたら時間なんて、すぐに過ぎた。。。





好きだ、と何度も言ったりして。
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