意気地無し少年と自傷少年。

□もう何年も。
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視点、八雲。

「八雲康介ッ!」
「っ、はいぃ!」
突然呼ばれた担任の掛け声により友達との会話が中断された。
「あっはは!ウケる。はいぃ!だって!」
「う…るっせぇな!」
隣で笑う友達がとてもうるさい…。
「八雲!お前はいつになったら覚えるんだ!また中間全科目合計点数186点だぞ!」
「ちょっ、先生!」
先生のすこぶる早いお唱えの中にしっかり聞こえた。
「ご、合計点数、186点…だと!?」
「ぶっふ!康介の奴!186点だって!」
隣の奴のせいでクラス中から、笑いが溢れた。…って、嬉しくねぇよ!!!
先生の奴もよく人の点数言えるな、ったく!人権侵害だッ!

ーキーンコーンカーンコーン。
「くそっ、お前なんかと友達やめてやる!」
「ごめん、ごめん、お詫びの印に放課後勉強をお教え差し上げましょう!」
「いらねーよ、バーカ。」
そんな言い合いをしながら配食しているおばちゃんの所へと行った。
「お!カレーパンだ!ここんちのうめーんだよ!!」
「ふーん。」
ーガサッ。
「げっ!」
「何?」
俺が手にしたパンを見て1歩引いたのが見て取れた。
「お、おま、何、食うの?」
「ミカンソーセージパンだ!」
と、折角説明してみれば口に手を当て今にも吐きそうな顔をしていた。…失礼な奴だ。
「はい。130円ね。」
「サンキュー。」
そう言って歩き出すと
「おい、どこ行くんだよ。」
「点数の事で色々言われそーだしな。屋上で食うわ。」
この時、俺は会ってはいけない人と会うことになるのだ。
それが悲劇に繋がる事とは知りもせずに。

視点、鈴鹿。
今日もいじめられた。まあ、いつもと同じ感じなので別になんとも思っていませんが。
…どこを直せばいいのかわからない。
…というかどこが悪いのかもわからない。
どうして僕だけがこんな思いをするのか…。
毎日考えるけどそれがいけないのかもしれない。
親もいなければ兄弟もいない。1人でもそんな何かがあればこんな人生にならなかったかもしれない。
義理の兄がいるけど…会うだけで…怖い。
弁当は当たり前というように毎日自作持参だ。
しかし作っても食事が喉に通らず涙しか出てこない。
慣れてる…はず…なのに。
ーガチャッ。
「っ…!」
誰かもわからないくせに反射的に身体が強張る。
ードサッ。
「いただきまーす。」
何故横に座るんだ!
待って、待って!これはきっと罠だ!油断させといて後で傷つけるという…。
「ぅ、う。」
考えなきゃよかった。考えるだけで涙が止まらなくなる…ほんと可笑しいな。
「大、丈夫?」
「えっ?」
何でそんな事を言うのだろう。
そう思った瞬間…
『あ。』
呆気ない声が出て2人とも顔を背ける。
…というか、何処かで見た顔…康…?
「あの、違かったら悪いんだけどさ。その、春樹?」
「え、やっぱり、康!?」
懐かしい。約4年ぶりの再会だ!
というか2年も同じ学校にいて気づかないとか!
「ええ!めっちゃ懐かしい!」
「そう、だね!小学校ぶり?」
しかしそんな再会話はこれから来るという少年達の笑い声によって掻き消される。
あ、来る…。
「こ、康…。僕あの用事思い出しちゃって!」
「あ、そ、うか?」
「そ!ごめん!」
ーぱしっ。
「ッ!」
振り返れば康が僕の手首を掴んでいた。
何!ヤバイ。早くしないと…!
「春樹、何組なの?」
えっ?関係なっ。って、あああ!もういいや!
「えっと、3組!」
そう言って振り払うと逃げるようにして走った。

視点、康介。
んだよ、あいつ。久々に会ったってのに!
「あれ?今の鈴鹿じゃね?」
「うっわー、やだわー。」
…どういう…。
「馬鹿鈴鹿って、アダ名だっけ?今度試して見よ!」
「女男だろ?きもいよなー」
「あ、康介じゃん!鈴鹿春樹って、知ってるだろ?あんま近づかない方がいいぜ」
「な、んで?」
「皆嫌ってるんだよ。」
「そ、うか。気を付けるよ…」
何言ってんだ俺…。そういえば急いでたのって…。
ーキーンコーンカーンコーン。
「あっ!授業遅れる!」
…放課後聞くしかないかな。3組っつってたし。
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