ほん 2
□永遠
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「この世界に、私がいなくなったらさ、」
「うん」
「んや、やっぱなんもない…」
「はあ?なんなの?」
苛ついた声で返されても仕方ない。大事な休日に呼ばれ来たのに、こんなくだらない話を聞かされるのだから。
「そういえば、前川くんの噂聞いた?」
ずっと弄っていたスマホを置いて、身をこちらに乗り出す友人から目を逸らした。そして、目の前にある甘いココアに口をつける。
「知らないけど、なんかあったの?」
「それがね、本命できたらしいよ」
「へーあの前川くんが」
「まあ、嘘だとは思うんだけどね」
友人は言いたいことを言い終えてすっきりしたのか、再びスマホを手に取る。
「だって未だに色んな女と繋がってるっぽいしさ。…やっぱ、前川くんが本命できたっていうのだって、有り得ないじゃん?」
「まあ、そうかもね。…でも、前川くんと結構仲よかったんじゃなかったっけ」
「あーちょっと話をする仲だよ。私、前川くんなんかどうでもいいの」
「小鳥遊くんだったね」
「そうそう。前川くんはさ、人間と思えないくらい美しすぎて、逆に近づきたくないって感じだけど、小鳥遊くんは男前だし、本当優しいし」
確かに前川くんは人間と思えないくらいの美貌をもっている。それこそ、神様って酷いなって思うくらいに。そんな前川くんといつも一緒にいる小鳥遊くんは、あまり目立たないが、友人の言う通り男前で、優しいし、近づきやすい。
「前川くんの本命って、誰だろうね
「まあ、前川くん並に美しいお方なんじゃない?」
友人は私の疑問に相槌を打ちつつ、ミルクの入っていないコーヒーを飲み干して、少しとげのある言葉に私は笑う。
ぼろいアパートに戻り、部屋に入ると散らかっていた。犯人が誰かなんて、もう知っているので、とりあえず、片付けられるものは片付けた。
ところどころにガラスの破片もあるので、犯人はまた手当もせずに私を待っているだろう。救急箱も持って、リビングに行くと、やはりここも散らかっていた。
「伊坂はホント、ビビリだねぇ」
散らかした本人はベッドには寝ずに、床で寝ていた。手は血で真っ赤になっていた。
ねちっこい喋り方で茶化されるのも、もう慣れっこで、とりあえず手当をする。
「…また盗聴したの」
「心配なんだもぉん」
彼の男らしい手からは想像もつかないくらいの、ねちっこい喋り方は恐らく私しか知らない。