ほん 2

□呼吸
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貴方の吐息が忘れられなくて
未だ踏み出せずにいる
特別な人もいる貴方を
子供が特別な人に選んだ



陳腐なセリフを読み上げて
演技もそこそこに
さっさと切り上げるべきところで
変な失敗をする子供が泣きわめく



きっと、って呟いた
光が見えた気がした



呼吸する度に貴方を思い出した
貴方のいない生活を思い出せない
ねえ、って猫なで声で貴方の気をひきつける
貴方は一つ笑い、子供をあやした



貴方と共に人生を歩んで
いつも夢見ていた妄想
特別な人と誓い合う貴方が
とても優しく笑った



陳腐なセリフを読み上げて
演技派女優デビュー
貴方の顔を見たくなくて
子供は変な意地を張って逃げ出した



どうせ、って諦めた
階段から落ちて転ぶ



呼吸する度に胸が苦しくなった
貴方の笑った顔を初めて見た
うそつき、振り絞って出た声は貴方に届かない
貴方は特別な人と、子供はひとり





演技派女優デビューしたのに
これじゃあ失格って
自分を笑った子供は
大人になれずにいた


裏切られた、なんて貴方に
そんなセリフは通じない


きっと、って呟いた
立ち上がらないとね



呼吸する度に貴方を思い出した
貴方のいない生活に慣れないと
ねえ、って大人びた声で貴方との関係を切る
貴方は一つ笑い、子供を残した




子供はこれから大人になる

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